宮城野錦之助

宮城野 錦之助（みやぎの にしきのすけ）は、江戸時代中後期に活躍した大相撲力士です。延享元年（1744年）に陸奥国江刺郡（現在の岩手県奥州市）で生を受け、寛政10年6月5日（1798年7月18日）に江戸で没しました。本名を小島 大八といい、身長182cm、体重116kgという当時としては立派な体格を誇り、最高位は関脇まで昇進しました。

相撲の世界へは、まず江戸相撲の関ノ戸億右衛門に弟子入りし、繪刺川 大八と名乗って明和3年（1766年）に初めて土俵を踏みました。その後、仙台出身の宮城野丈助の門に移り、宮城野大八と改名します。安永10年（1781年）3月、38歳という遅咲きながらも新入幕を果たしました。そして、天明3年（1783年）3月には小結に昇進し、名を現在の宮城野錦之助と改めました。

彼の四股名である「宮城野」は、お抱え藩であった仙台藩にゆかりのある地名から取られたものです。錦之助は人柄が非常に良く、多くの人から慕われ、厚い人望を集めていました。また、力士としての特長としては、立合いの巧みさが挙げられます。仕切りの際に相手を待たせる「待った」をしない力士としても知られていました。

特筆すべきはその現役生活の長さです。明和3年（1766年）の初土俵から、最終場所となった寛政8年（1796年）3月場所まで、実に30年もの長きにわたり土俵を務めました。最終場所の時点で52歳であったことは、記録が明確に残っている力士としては異例の高齢となります。現役最高齢については、数え60歳（満59歳）で現役中に死去したとされる八十嶋冨五郎の例があるため断定はできませんが、三役経験のある力士の中では、史上最高齢で現役を務めた力士であると考えられています。

天明6年（1786年）6月11日には、力士として最高の栄誉の一つとされる上覧相撲に出場する機会を得ました。江戸城吹上上覧所にて、時の将軍徳川家斉公が臨席する中、宮城野錦之助は谷風梶之助、雷電為右衛門、小野川喜三郎といった当時を代表する強豪たちと共に登城しました。そして、鷲ヶ浜武太夫と対戦し、見事に勝利を収めました。この功績に対し、家斉公より御持用の扇子を、また姫様からは脇差しを拝領するという破格の褒美を賜りました。この上覧相撲の模様は、松浦清が著した『甲子夜話』にも詳しく記されています。この錦之助の活躍は、お抱え藩である仙台藩にも大きな名誉をもたらしました。藩主の伊達斉村は、錦之助の息子である小嶋藤太郎を呼び出して直接目見えし、その功を労いました。また、宮城野錦之助自身も、仙台藩から七両七人扶持という扶持米と金銭を与えられ、徒士格という武士に準ずる身分を与えられました。さらに、白石城主の片倉小十郎に預けられ、その庇護を受けることとなりましたが、この俸禄は錦之助一代限りのものでした。

寛政4年（1792年）、錦之助は自らの名を冠した宮城野部屋を興し、年寄・宮城野の初代を襲名しました。力士としてだけでなく、指導者としても角界に貢献しました。

寛政10年（1798年）6月5日、江戸においてその生涯を終えました。墓所は江戸の三田にある日蓮宗長運寺にあります。また、故郷である仙台藩岩谷堂の向山墓地にも分骨された墓が建てられています。

宮城野錦之助の家系は、下野国佐野から浪人として岩谷堂に移り住み、佐野屋を屋号として代々続いた小嶋興左衛門に遡ります。錦之助の孫にあたる喜七は刀匠として知られていましたが、後に相馬大作事件に関わり、その功績が認められて弘前藩に武士として200石で仕官し、小島嘉兵衛貞勝と改名しています。

幕内在位場所数は22場所を数え、幕内成績は61勝30敗、その他休場86、分（引き分け）14、預（預かり）6、無勝負12という記録を残しています。当時の番付表記や地位の解釈には現代と異なる点があるものの、宮城野錦之助は江戸時代を代表する力士の一人として、特にその長寿力士としての側面と、上覧相撲での輝かしい活躍により、現在も記憶されています。

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