宮岡政雄

宮岡政雄（1913年7月2日-1982年8月8日）は、20世紀日本の歴史において重要な役割を果たした人物です。東京都立川市砂川町で、代々続く農家の16代目として生まれ育ちました。穏やかな田園風景が広がる故郷で、彼は農業を営みながら、地域社会に深く根ざした生活を送っていました。しかし、彼の生涯は、平和な農村の風景とは対照的な激動の時代と深く結びつくことになります。

1955年、アメリカ空軍立川基地の滑走路延長計画が発表されると、地元住民の間には強い反発が巻き起こりました。この計画は、多くの農地を奪い、人々の生活を脅かすものだったからです。宮岡政雄はこの時、地元住民を代表する立場として、基地拡張反対運動の中心に立ち上がります。彼は『砂川闘争』と呼ばれるこの運動において、副行動隊長として重要な役割を果たしました。

砂川闘争は、激しい抗議活動と、米軍基地への不法侵入事件（砂川事件）を引き起こし、社会的な大きな注目を集めました。宮岡政雄は、この事件の訴訟において、地元農民のリーダーとして、勇敢に闘い抜きました。彼は法律の専門家ではありませんでしたが、独学で法律を学び、その知識と情熱で、農民たちの権利を守るために尽力しました。その卓越した弁護活動から『砂川の法務大臣』という異名を取るほどでした。

砂川闘争の経験は、宮岡政雄の生涯に大きな影響を与えました。彼は、この闘争の記録を詳細にまとめた『砂川闘争の記録』を1970年に出版しました。この本は、単なる闘争の記録にとどまらず、土地と人々の生活を守るための闘いの意義を深く訴えるものです。

1969年4月、政府は立川基地拡張計画の中止を決定し、砂川闘争はひとまず終息しました。しかし、宮岡政雄の活動はここで終わりませんでした。彼は、三里塚芝山連合空港反対同盟の活動にも深く関与し、三里塚闘争（成田空港問題）を支援しました。特に、三里塚闘争の中核派である秋山勝行委員長ら全学連関係者と、戸村一作ら三里塚の反対運動関係者とのパイプ役を担うなど、重要な役割を演じました。

三里塚芝山連合空港反対同盟事務局長の北原鉱治とは親しい友人関係にあり、北原は宮岡の娘の花嫁衣装の手配にも尽力するなど、個人的にも深い信頼関係で結ばれていました。宮岡の葬儀にも北原は参列し、彼の死後も、宮岡の活動は多くの人々の記憶に刻まれたのです。

宮岡政雄の死後、彼の次女である福島京子が『砂川闘争の記録』を復刊させ、2010年には地元に「砂川平和ひろば」資料館を開設しました。これらの活動は、宮岡政雄の生涯と、彼が闘った平和と正義への想いを後世に伝える重要な役割を担っています。宮岡政雄は、時代が求めた平和主義者であり、強い正義感を持った活動家であったと言えるでしょう。彼の生涯は、私たちに、社会正義と平和への揺るぎない意志の大切さを教えてくれます。

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