富知六所浅間神社

富知六所浅間神社の概要

富知六所浅間神社（ふじろくしょせんげんじんじゃ）は、静岡県富士市に位置する神社です。式内社論社であり、旧社格は郷社、現在は神社本庁の別表神社となっています。通称として三日市浅間神社（みっかいちせんげんじんじゃ）とも呼ばれ、全国に数ある浅間神社の中でも、特に重要な一社とされています。この神社は、富士下方五社（五社浅間）の中でも「六所宮」として首座を占めています。

祭神

富知六所浅間神社の祭神は以下の通りです。

主祭神:
大山祇命（おおやまつみのみこと） - 山の神として信仰されています。
相殿神:
木花之佐久夜毘売命（このはなのさくやひめのみこと） - 大山祇命の娘。
深淵之水夜礼花神（ふかふちのみずやれはなのかみ） - 大山祇命の子孫。
阿波乃咩神（あわのめのかみ） - 三島神の妻。
大山咋神（おおやまくいのかみ） - 大山祇命の子孫。
高龗神（たかおかみのかみ） - 水神。

一般的に浅間神社は木花開耶姫命を主祭神とすることが多いですが、富知六所浅間神社ではその父神である大山祇命を主祭神としている点が特徴です。また、神仏習合時代には金剛界大日如来を本地仏としていました。

歴史

神社の伝承によれば、孝昭天皇2年（紀元前473年）6月10日に富士山山腹に創建されたと伝えられています。その後、富士山の噴火により延暦4年（785年）に現在の地へ遷座したとされています。崇神天皇の時代には、四道将軍として派遣された建沼河別命が当社を厚く崇敬し、勅幣を奉ったとされています。また、周辺に市が立ち、「三日市浅間」と呼ばれるようになったと伝えられています。明和4年（1767年）に記された由緒書によると、平城天皇の大同元年（806年）に五社（当社を含む）が建立されたとされています。

もとは「六所宮」や「六所浅間宮」と呼ばれていましたが、明治5年（1872年）に郷社に列せられる際に、富知六所浅間神社と改称されました。中世には六所宮と呼ばれることが多く、近世の史料である文久2年（1862年）の図では、「冨士六所浅間宮 吉原宿ヨリ凡八丁」と記されています。

当社は富士下方五社の1つであり、五社別当を務める東泉院（現在は廃寺）が直轄する神社でした。五社の中でも惣社とされ、永禄13年（1560年）の「富士山大縁起」には「惣社」と記されており、五社の中で筆頭に位置づけられていました。しかし、その影響力は時代によって変動し、駿河侵攻後に武田氏が同地を支配すると、武田信玄は元亀元年（1570年）に別当職を東泉院から久能寺に与えました。これは、久能寺が「武運長久の祈念」を行ったことに対する恩賞でした。

武田氏滅亡後、小田原征伐を経て徳川家康が関東に移封されると、駿河国は豊臣秀吉の影響下に置かれました。この際、東泉院は天正18年（1590年）に別当領190石を安堵されました。この190石は六所宮を含む下方五社の神領であったため、六所宮は再び東泉院の勢力下に戻ったとされます。しかし、慶長5年（1600年）の朱印状では、190石が安堵されているのは東泉院ではなく、久能寺の院家の一つである智勝坊であり、再び久能寺の勢力下に入りました。智勝坊は東泉院から東泉院領および富士下方別当職を譲り受け、それ以降、六所宮は久能寺の支配下に置かれました。

『延喜式』神名帳中の駿河国富士郡の式内社として「富知神社」があり、当社はその論社の一つとされています。

主な祭事

富知六所浅間神社では、年間を通して様々な祭事が行われます。

元旦祭（1月1日）: 新年の始まりを祝う祭典。
古神札焼納祭、どんど焼き神事（1月14日）: 古いお札やお守りを焼納し、一年の無病息災を祈願します。
大樟祭（4月29日）: 樹齢1200年を超える御神木を拝み、自然への感謝を捧げる祭典。
例大祭（5月3日）: 5月1日の月次祭、2日の宵宮祭と合わせて、多くの参拝者で賑わいます。ゴールデンウィーク期間中は特別期間となります。
吉原祇園祭（6月第2土曜日、日曜日）: 兼務神社である吉原木元神社など、複数の神社が合同で行う祇園祭。岳南総社である富知六所浅間神社が神事を奉仕し、2日間で20万人を超える人出があります。
夏祭り（8月中旬のお盆時期）: 終戦の時期に合わせ、戦没者の霊を慰め、世界の平和を祈るお祭り。平和祈願祭が行われ、境内では地元店舗の出店や奉納演奏が行われます。
御日待ち祭（10月第1土曜日、雨天の場合は翌日）: 近隣の氏子町内会が主催する秋祭り。氏子による準備や出店、奉納演奏が行われます。

境内

社殿: 現在の本殿と拝殿は、平成27年10月に完成したものです。
神木: 社殿の東側に、樹齢約1200年と伝えられるクスノキの御神木があります。この御神木は静岡県天然記念物に指定されています。

現地情報

所在地: 静岡県富士市浅間本町5-1
交通アクセス:
鉄道: 岳南電車岳南線 吉原本町駅から徒歩約20分
車: 東名高速道路 富士ICから約10分

参考文献

富士市立博物館『六所家総合調査報告書 聖教』富士市教育委員会、2015年。

外部リンク

富知六所浅間神社（静岡県神社庁）
富知六所浅間神社公式Twitter
* 富知六所浅間神社公式Instagram

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