孝昭天皇

孝昭天皇



孝昭天皇(こうしょうてんのう)は、日本の第5代天皇であり、観松彦香殖稲天皇(みまつひこかえしねのすめらみこと)とも呼ばれています。在位期間は『日本書紀』によると、孝昭天皇元年1月9日から孝昭天皇83年8月5日までとされています。しかし、実在性については議論があり、欠史八代の一人とされています。

生涯



孝昭天皇は、懿徳天皇(いとくてんのう)の皇子として誕生しました。母親は息石耳命(おきそみみのみこと)の娘である天豊津媛命(あめとよつひめのみこと)です。同母兄弟には武石彦奇友背命(たけしひこくしともせのみこと、別名:多芸志比古命(たぎしひこのみこと))がいます。父帝の崩御後、2年を経て即位し、同年7月には都を掖上池心宮(わきがみのいけごころのみや)へ移しました。

即位29年、尾張連(おわりのむらじ)の祖である瀛津世襲(おきつよつぐ)の妹、世襲足媛(よそたらしひめ)を皇后に迎え、天足彦国押人命(あめたらしひこくにおしひとのみこと)と日本足彦国押人尊(やまとたらしひこくにおしひとのみこと、後の孝安天皇)をもうけました。孝昭天皇は即位から83年後に崩御しました。

名前



日本書紀』では観松彦香殖稲天皇、『古事記』では御真津日子訶恵志泥命(みまつひこかえしねのみこと)と記されています。漢風諡号である「孝昭」は、8世紀後半に淡海三船(おうみのみふね)によって撰進されたとされています。

事績



日本書紀』と『古事記』には系譜のみが記載されており、具体的な事績はほとんど記録されていません。そのため、欠史八代の一人に数えられています。

系譜



皇后世襲足媛(よそたらしひめ、古事記では余曽多本毘売命(よそたもとびめのみこと))
尾張連の祖、瀛津世襲の妹。
日本書紀』の一書では、磯城県主葉江の娘の渟名城津媛(ぬなきつひめ)、また別の書では倭国豊秋狭太媛(やまとのとよあきさひめ)の娘の大井媛(おおいひめ)とする説も存在します。
第一皇子:天足彦国押人命
和珥臣(わにのおみ)、春日氏(かすがし)、小野氏(おのし)など諸氏族の祖とされています。
第二皇子:日本足彦国押人尊
後の第6代孝安天皇です。

年譜



懿徳天皇5年:誕生
懿徳天皇22年:立太子
孝昭天皇元年:即位、掖上池心宮へ遷都
孝昭天皇29年:世襲足媛を立后
孝昭天皇68年:日本足彦国押人尊を立太子
孝昭天皇83年:崩御。宝算は『日本書紀』では114歳、『古事記』では93歳。
孝安天皇38年:掖上博多山上陵(わきのかみのはかたのやまのえのみささぎ)に葬られる

宮と陵



孝昭天皇の宮は、『日本書紀』では掖上池心宮、『古事記』では葛城掖上宮(かずらぎわきがみのみや)と記されています。現在の奈良県御所市池之内周辺がその伝承地とされています。陵は、掖上博多山上陵であり、宮内庁により奈良県御所市大字三室にある俗称「博多山」に治定されています。

伝承



孝昭天皇にまつわる伝承は、各地の神社に残されています。以下に主な例を挙げます。

氷川神社武蔵国):孝昭天皇3年(紀元前473年)の創建と伝えられ、出雲国の杵築大社(出雲大社)を遷したとされています。氷川の名前は斐伊川にちなむとされています。
楡山神社武蔵国):孝昭天皇の御代の御鎮座とされており、御神紋は「八咫烏」と伝わっています。
箱根神社相模国):孝昭天皇の御代に、聖占仙人が神山に鎮まる山神の威徳を感応し、駒ヶ岳山頂に神仙宮を開いたのが始まりとされています。
伊豆山神社伊豆国):孝昭天皇の御代の創建とされ、当初は日金山(現在の十国峠)山頂にあったとされています。
富知六所浅間神社駿河国):孝昭天皇2年(紀元前474年)の創建と伝えられています。
石津神社和泉国):孝昭天皇7年(紀元前469年)の創建とされ、事代主神(戎神)がこの地に降臨したことに由来するとされています。
狭野神社日向国):孝昭天皇の御代の創建とされ、神武天皇御降誕の地とされています。
東霧島神社日向国):孝昭天皇の御代に創建されたと伝えられています。


考証



実在性



孝昭天皇を含む欠史八代の天皇は、事績の記録が少なく、その実在性について様々な議論があります。治世の長さが不自然であること、父子間直系相続であること、宮や陵の所在地が前期古墳の分布と一致しないことなどから、創作性が強いとする見方があります。一方、原典の存在や天皇代数の尊重、系譜に見られる磯城県主や十市県主との関わりなどから、全てを虚構とすることは否定する見解もあります。

治世の長さについては、春秋二倍暦説で説明できるとする見方もありますが、それでもなお当時の平均寿命を大幅に超えている点は疑問視されています。

名称



「みまつひこ-かえしね」という和風諡号のうち、「みまつひこ」は後世に付加された美称で、「ね」は神名の末尾に付くものと同義と見なす説があります。この説では、孝昭天皇の原像は「かえしね」という古い神であり、それが天皇に作り変えられたと推測されています。

まとめ



孝昭天皇は、実在が確証されていないものの、日本の古代史において重要な位置を占める天皇の一人です。その生涯や事績には謎が多いものの、関連する伝承や歴史的な考察を通じて、古代日本の姿を垣間見ることができます。



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