寒川神社

寒川神社の詳細解説

寒川神社（さむかわじんじゃ）は、神奈川県高座郡寒川町に鎮座する、相模国の一之宮として知られる古社です。創建は不詳ながら、約1600年前には朝廷からの幣帛があったとされ、延喜式神名帳にも記載される名神大社です。八方除の神として広く信仰を集め、年間約200万人が参拝に訪れます。特に、昇殿祈祷の件数は日本一を誇り、その数は年間約30万件に達します。初詣の参拝者数も神奈川県内では鶴岡八幡宮に次いで2番目に多く、多くの人々から崇敬を集めています。

歴史

寒川神社の創建は非常に古く、弥生時代には相模湾がこの地まで入り込んでいたとされています。一説には、古代にこの地を支配していた相武国造の氏神として祀られたのが始まりとされています。5世紀の雄略天皇の時代にはすでに朝廷からの幣帛があり、奈良時代、平安時代には国幣大社として朝廷の祭祀に預かっていました。

鎌倉時代には、源頼朝や北条氏からも崇敬され、戦国時代には武田信玄が戦勝祈願に訪れ、兜と太刀を奉納したと伝えられています。江戸時代には徳川家康から社領を認められ、明治時代には国幣中社に列しました。

1923年の関東大震災で社殿が損傷しましたが、1927年に修復されました。この神社は、古くから人々の信仰を集め、地域の歴史と文化を今に伝える重要な存在です。

祭神

寒川神社の祭神は、以下の二柱です。

寒川比古命（さむかわひこのみこと）
寒川比女命（さむかわひめのみこと）

この二柱は「寒川大明神」と総称されますが、記紀には記載がなく、詳しい出自は不明です。一説には、大水上命（おおみなかみのかみ）の御子であるとも言われています。また、この二柱は伊勢神宮の末社である牟弥乃神社でも祀られています。

その他にも、佐河大明神、八幡神、菊理媛命、澤女神、素盞嗚命と稲田姫尊、大己貴尊など、様々な神が祭神として挙げられることもありますが、いずれも詳細は不明です。

境内と参道

寒川神社の境内は、神聖な雰囲気に包まれています。本殿の前には神門があり、参道は一之鳥居から始まり、二之鳥居、三之鳥居と続きます。参道は、JR相模線の踏切近くにある一之鳥居から約1km続いています。

2001年からは、新年の期間に神門に「迎春ねぶた」が飾られるようになりました。ねぶたは夜にはライトアップされ、幻想的な雰囲気を醸し出します。2012年までは干支にちなんだねぶたが飾られていましたが、2013年からは神話ねぶたが飾られています。

拝殿の右側には、天体観測器具である渾天儀のレプリカが設置されており、四隅には龍が配置されています。台座は方位盤になっており、古代の天文学への関心を偲ばせます。

神嶽山神苑

本殿裏手には、「神嶽山神苑」と呼ばれる神苑があります。ここは、寒川神社の起源と深く関わる「難波の小池」を中心に、裏山の神嶽山を整備したものです。2009年に一般公開されたこの神苑は、世界的に有名な日本庭園デザイナー、枡野俊明氏によって設計されました。

神苑内には、以下の見所があります。

裏参拝所：神嶽山を正中軸より拝する場所。
八氣の泉：旧三之鳥居の基礎石から湧き出る泉。
直心庵：梅見門と腰掛待合を備えた茶室。
和楽亭：抹茶と菓子をいただける茶屋。
方徳資料館：「八方除」に関する資料を展示。
難波の小池：本殿の真裏にある神池。
御祖神社：神嶽山神苑内に鎮座する末社。
宮山神社：境内の西方に鎮座する末社。

神苑は、4月1日から11月30日までの期間、祈祷を受けた人のみが無料で入苑できます。

主な祭事

寒川神社では、年間を通して様々な祭事が行われます。主な祭事は以下の通りです。

武佐弓祭（1月8日）：新年の無病息災を祈願する祭。
国府祭（5月5日）：相模国の神々が集まり、問答を行う祭。
浜降古式祭（7月15日）：海で禊を行う祭。
浜降祭（7月第3月曜日）：海で禊を行う祭。
例大祭（9月20日）：神社の最も重要な祭。

特に国府祭は、相模国の神々が集まり、問答を行う珍しい儀式として知られています。この祭りは、律令体制以前の磯長国と相武国の合併に際し、どちらが一宮になるかを論議したことが起源とされています。

文化財

寒川神社には、以下の貴重な文化財が所蔵されています。

神奈川県指定重要文化財
六十二間筋兜鉢・附金具残闕三種：武田信玄が奉納したと伝えられる兜。
寒川町指定重要文化財
翁の古面：江戸時代後期の翁面。
神輿：江戸時代後期の豪華な神輿。
大太刀一振、太刀拵一式：南北朝時代の姿を残す大太刀。
経鎗（仕込杖）一式・鎗（鎗先）一穂：作者不明の鎗。
寒川神社の棟札（小田原北条氏ゆかりの棟札3点）：後北条氏が再興した際の棟札。

これらの文化財は、寒川神社の歴史と文化を物語る貴重な資料です。

アクセス

寒川神社へのアクセスは、以下の通りです。

鉄道：JR相模線 宮山駅（徒歩5分）
バス：神奈川中央交通・相鉄バス「寒川神社参道」（海老名駅・寒川駅発着）
自動車：圏央道寒川北IC（約1km）

年末年始には、海老名駅、茅ヶ崎駅、本厚木駅からの直通バスが運行されます。

その他

寒川神社は、昇殿祈祷者が日本一多い神社として知られています。また、著名人の参拝も多く、内閣総理大臣経験者や皇族、芸能関係者などが訪れています。

江戸時代の和算家、入澤博篤が奉納した算額には、フレデリック・ソディが発表した「六球連鎖の定理」と同じものが記述されており、当時の日本の和算の水準の高さを物語っています。

アメリカ合衆国のブルックリン植物園には、寒川神社から寄贈された神輿が展示されています。

2000年には、トヨタ自動車の「ノア」のテレビCM撮影が境内で行われました。

まとめ

寒川神社は、古くから人々の信仰を集める歴史ある神社です。八方除の神としてだけでなく、美しい境内や文化財、様々な祭事など、多くの魅力を持っています。ぜひ一度訪れて、その神聖な雰囲気を体験してみてください。

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