寝取られ

寝取られ（NTR）とは

「寝取られ」（ねとられ）とは、一般的に、自分の配偶者や恋人が他の人と性的関係を持つ状況を指す言葉です。この状況に性的興奮を覚える嗜好を持つ人向けのフィクション作品のジャンル名としても使われます。NTR、ネトラレと表記されることもあります。

用語の歴史

自分の恋人や妻が他の男性と性的関係を持つことに快楽を覚える性的嗜好は、古くから文学作品に描かれてきました。谷崎潤一郎の『鍵』やマゾッホの『毛皮を着たヴィーナス』などがその例です。しかし、この性的嗜好を表す具体的な用語は、近年までほとんど存在しませんでした。

近年では、インターネットやアダルトゲーム、アダルトビデオのジャンル名としてこの言葉が広く使われるようになり、一般的な話題や報道でも見られるようになりました。夫婦間のセックスレス解消法の一つとして専門家が言及することもあります。

「寝取られ男」を表す言葉として、フランス語の「コキュ」(cocue) があります。フランスはコキュ文化の国とされ、このテーマを描いた文学や演劇が数多く存在します。哲学者シャルル・フーリエは著書『四運動の理論』で、コキュを以下の3種類に分類しました。

コキュ: 浮気されていることを知らない
コルナール: 浮気されていることを知り、激怒している
コルネット: 浮気されていることを知っていても冷静である

これらの言葉は、それぞれカッコウの鳴き声や、角を意味するイタリア語「コルナ」が語源となっています。これは、「妻を寝取られた夫には角が生える」という西洋の伝説に由来します。角を表すハンドサイン・コルナには、「寝取られ男（女）」を揶揄する意味合いも含まれています。

フランス文学におけるコキュは、寝取られ男の滑稽さを描くことが主眼であり、現在の日本における、この状況に興奮するフェティシズムとはやや異なります。

英語では、「cuckold」が寝取られ男を表す言葉として使われています。この言葉もカッコウの鳴き声が語源です。シェイクスピアの戯曲にも登場するなど、古くから存在します。

現代中国語では、「緑帽子」が「妻や恋人を寝取られた男」を意味する最も強い侮辱表現として使われます。これは、元明代の中国で、妓女の夫が緑色の帽子をかぶっていたことに由来します。「王八蛋」や「烏亀」も同様に、「妻を寝取られた間抜け」という意味の侮辱表現です。

概念・要素の歴史

寝取られの要素を含む物語は、ギリシア神話、北欧神話、エジプト神話など、世界各地の神話時代から存在していました。文学においても、12世紀のケルト説話『トリスタンとイズー』、14世紀の『デカメロン』、16世紀の『第三の書』など、数多くの作品にその要素が見られます。

特にフランスでは、寝取られ（コキュ）を題材にした作品が多く、フーリエはコキュの種類を64種に分類したほどです。フランス文学者の鹿島茂は「フランス文学はコキュ文学」と評しています。

日本では、11世紀に書かれた『源氏物語』に、女三の宮のエピソードとして寝取られの要素が登場します。

創作ジャンルとしてのNTR

NTRの語源

「NTR」という言葉の語源については諸説あります。本橋信宏は、現実で妻を寝取られたい男性が集まるインターネットサイトで、この趣味を持つ人が「NTR」と略したのが始まりだと述べています。また、ちゆは、自身の個人サイトの掲示板で、寝取られゲームを確立させるために略称を作ろうとした際に、管理人が「NTR」を提案したのが始まりだと述べています。この時、NTRとは、ヒロインが主人公以外のキャラクターと絡むシーンがあることを意味していました。

NTRのジャンル

創作物における寝取られ（NTR）には、以下の様なジャンルがあります。

寝取られ: 恋人や妻を他の男性に寝取られた側が、精神的なショックや屈辱感を感じる作品
寝取らせ: 男性が自分の恋人や妻を他の男性と関係させることで、性的快感を得る作品
寝取り: 他人の恋人や妻を寝取る側の視点で描かれた作品

NTRのバリエーション

NTRに類似するバリエーションとしては、以下のようなものがあります。

BSS: 「僕が先に好きだったのに」の略。片思いの女性を他の男性に奪われる作品
WSS: 「私が先に好きだったのに」の略。BSSの女性視点版だが、あまり使用されない

NTRジャンルの人気

FANZAの調査によると、「寝取り・寝取られ」は、男女別、年齢別、地域別すべてのセグメントで最も人気のあるジャンルです。

FAKKU!によるアメリカでの調査では、Netorare(寝取られ)はカルフォルニア州で特に人気が高いという結果が出ています。また、「ねとられ専門」をうたうAVメーカーも存在します。

まとめ

「寝取られ」は、古くから存在した概念であり、文学や神話にもその要素が見られます。近年では、創作ジャンルとしての人気も高く、多くの作品が生み出されています。この言葉は、単なる性的嗜好を表すだけでなく、人間関係や欲望の複雑さを反映するテーマとして、様々な形で表現されています。

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