寺尾五郎

寺尾五郎の生涯と活動

寺尾五郎（てらお ごろう、生年1921年〈大正10年〉7月4日、逝去1999年〈平成11年〉8月21日）は、日本の社会運動家として名を馳せた人物です。彼は北海道の室蘭市に生まれ、1938年に早稲田大学文学部哲学科に入学。その後、共産主義運動に参加し、1940年には治安維持法違反で逮捕される運命にありました。

1943年、寺尾は召集を受けるが、1945年には満洲に配属されたチチハル航空部隊で反戦活動を行った結果、憲兵隊に拘束され、最終的には東京憲兵隊へ送還されます。1945年8月15日、日本が敗戦する二日後、警視庁特高課に移管され、治安維持法に基づく最後の被告となりました。その後、1945年10月10日に豊多摩刑務所から出所し、再び日本共産党の専従活動を開始しました。

寺尾は1950年、コミンフォルムの『日本の情勢について』を巡る内紛に巻き込まれ、国際派として除名されますが、5年後の日本共産党第6回全国協議会で復帰します。1958年には北朝鮮建国10周年記念式典に、訪朝使節団の一員として訪問し、北朝鮮の姿を描いた著作『38度線の北』を発表しました。

1960年代には、平和運動や日中・日朝友好活動にかかわり、頻繁に両国を訪れました。1961年には日本朝鮮研究所を設立し、その理事として北朝鮮に関連する書物を多く執筆しました。しかし1966年、中国で文化大革命が開始されると、寺尾はこれを熱烈に支持し、1967年の善隣学生会館事件の際には中国共産党側に立ち、日本共産党に抗議して著作『日中不戦の思想』を発表しました。その結果、1968年には「中国派」として再び日本共産党から除名されます。

その後は日本共産党の左派結成に関与するとともに、吉田松陰や親鸞、特に安藤昌益に関する研究に重きを置きました。安藤昌益については、『安藤昌益全集』の監修・執筆を行い、彼の研究をライフワークとしました。

寺尾五郎は1999年に大腸癌で逝去しました。彼の死後、彼が集めた蔵書は農山漁村文化協会に寄贈され、同協会の図書館内で「寺尾五郎文庫」として公開されています。

訪朝時の事件

1960年8月には、寺尾は朝鮮解放15周年慶祝日朝協会使節団の秘書長として北朝鮮を訪れます。その際、8月27日、清津へ向かう急行列車の中で、彼が1959年に執筆した『38度線の北』を読んだ異国からの訪問者たちに取り囲まれるという事件が発生します。その3人は、著書に騙されて北朝鮮に来たとして、寺尾に責任を問い詰めました。

しかし、寺尾は彼らを反抗的な集団と判断し、話し合いに応じませんでした。その結果、彼らは安全員により列車から降ろされ、逮捕されました。この事件以降、金日成は北朝鮮の一般国民に対し、帰国同胞との交流を禁止する通達を出したとも言われています。

著作

寺尾の著作には、多様なテーマにわたる作品が存在します。その一部は以下の通りです。

• - 『アメリカ敗れたり? : 軍事的にみた朝鮮戦争』（1952年）
• - 『38度線の北』（1959年）
• - 『勝利なき戦争 : 三八度線から金門・馬祖まで』（1960年）
• - 『朝鮮・その北と南』（1961年）
• - 『日・朝・中三国人民連帯の歴史と理論』（1964年）
• - 『朝鮮問題入門』（1965年）
• - 『林彪の作戦』（1967年）
• - 『日中不戦の思想』（1967年）
• - 『革命家吉田松蔭 : 草莽崛起と共和制への展望』（1973年）
• - 『安藤昌益の闘い』（1978年）など。

寺尾五郎はその波乱に満ちた生涯において、数多くの著作を通じて、社会運動や思想方面で大きな影響を与え続けました。

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