寺島健

寺島健：海軍軍人から政治家へ、激動の生涯

寺島健（1882年9月23日 - 1972年10月30日）は、日本の海軍軍人、そして政治家として、明治、大正、昭和の時代を駆け抜けました。最終階級は海軍中将。退役後、東條内閣において逓信大臣、鉄道大臣を歴任しました。

生い立ちと海軍入りのきっかけ

寺島家は、戦国時代には武田信虎に仕え、江戸時代中期以降は紀州徳川家御付家老安藤家の家臣という家柄でした。父の寺島良業は和歌山県庁に勤務しており、健は四男として生まれます。妻は尾本知道の四女悦子。

和歌山中学に進学した寺島は、中学の先輩である岡本米次郎、野村吉三郎の海軍兵学校の生徒服姿に憧れ、海軍兵学校への進学を決意。競争率の高い難関を突破し、入校を果たします。海軍兵学校では学年が進むにつれて成績を上げ、卒業時には上位の成績を修めました。

日露戦争への従軍

海軍兵学校卒業後、寺島は練習艦隊での実務訓練を経て、日露戦争に従軍。第一艦隊第一戦隊所属の「敷島」乗組みとして、旅順口攻撃、黄海海戦、日本海海戦といった主要な海戦に参加しました。

「初瀬」、「八島」が触雷した際には、短艇指揮者として生存者の救出に尽力し、その功績により勲章を授与されています。

潜水艇への関わり

英国への出張後、寺島は潜水艇導入の功労者である井出謙治の勧めで、草創期の潜水艇隊に勤務。「第六号潜水艇」の艇長などを務めます。しかし、半潜航時に海水が流入する事故に遭遇。機関兵曹の適切な処置によって事なきを得ましたが、寺島はこの事故を教訓にベンチレーターの改良を図るなど、事故防止に尽力しました。

海軍大学校での学びと第一次世界大戦

海軍大学校では航海専攻士官として学び、「対馬」、「千歳」で航海長を歴任。その後、海軍大学校甲種に進み、長谷川清、加藤隆義、米内光政らと同期となります。第一次世界大戦では、第一南遣枝隊参謀として出征。その後、フランスに駐在し、フランス海軍の潜水艦調査などを行いました。

皇太子の欧州訪問と艦隊参謀長

昭和天皇が皇太子時代に欧州を訪問した際、寺島は御召艦「香取」、供奉艦「鹿島」からなる部隊の先任参謀に選ばれ、計画立案を担当。訪問を成功に導きました。その後、「山城」艦長を経て海軍少将に昇進。第二艦隊、第一艦隊兼連合艦隊の参謀長を歴任し、艦隊の指揮を支えました。

海軍省での要職と軍令部との対立

海軍省副官、教育局長、軍務局長といった要職を歴任。特に軍務局長時代には、軍令部の権限拡大を巡り、海軍省との対立が激化。寺島は海軍省側の中心人物として、軍令部の動きに抵抗しました。

予備役編入と浦賀ドック社長

軍令部との対立後、寺島は予備役に編入されますが、その後、浦賀ドックの社長に就任。造船事業に携わり、戦時中は20ミリ機銃の製造にも関わりました。

東條内閣での大臣就任と戦後

1941年、東條内閣において逓信大臣、鉄道大臣を兼任。しかし、戦後にはA級戦犯として逮捕され、公職追放となります。その後、釈放され、追放解除後は実業界で活動しました。

寺島健は、海軍軍人として数々の功績を残す一方で、政治家として激動の時代に関わり、その生涯は日本の近代史を象徴するものと言えるでしょう。

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