尊円法親王

尊円法親王（そんえんほっしんのう）

尊円法親王は、永仁6年（1298年）に生まれ、延文元年/正平11年（1356年）に亡くなった鎌倉時代後期から南北朝時代にかけての皇族であり、僧侶です。伏見天皇の第六皇子として生まれ、母は三善俊衡の娘です。初名は守彦親王といい、後に尊円入道親王とも呼ばれました。青蓮院第十七世門跡であり、その生涯は波乱に満ちたものでした。

青蓮院での出家と門跡就任

延慶元年（1308年）に青蓮院に入り、延慶3年（1310年）に親王宣下を受けました。翌年の延慶4年（1311年）には法門に入り、名を尊円と改め、青蓮院門跡に就任しました。しかし、当時の青蓮院は門跡の地位を巡り、二つの派閥に分裂していました。さらに、大覚寺統が亀山法皇の皇子である慈道法親王をもう一方の派閥に推していたため、青蓮院は深刻な内部抗争に陥っていました。

門跡管領と天台座主

正和3年（1314年）から元徳元年（1329年）にかけて、尊円法親王は門跡管領の地位を一時的に剥奪され、慈道法親王が門主となりました。しかし、鎌倉幕府の働きかけにより、後醍醐天皇の綸旨が下され、尊円法親王は再び門主となりました。元弘元年（1331年）には天台座主に任じられ、その後も四度にわたり天台座主を務め、その間には四天王寺別当も兼任しました。尊円法親王は、宗教界においても重要な役割を果たしていたことがわかります。

青蓮院の内部抗争終結

後醍醐天皇が鎌倉幕府を滅ぼすと、尊円法親王は再び門跡管領の地位を奪われ、慈道法親王が門主となりました。しかし、建武2年（1335年）に後醍醐天皇の勅裁による仲介が行われ、慈道法親王は尊円法親王を弟子として迎え、門跡の地位を譲ることになりました。その後、建武の乱により後醍醐天皇が吉野山に退去した後も、慈道法親王は約束通り尊円法親王を後継者として、青蓮院とその管下の寺院を譲渡しました。これにより、鎌倉時代初期から続いていた青蓮院の内部抗争は終結しました。

青蓮院流の創始

尊円法親王は、和歌を世尊寺行房に学び、行房が南朝方として北国金沢で戦死すると、その弟行尹に学びました。書道においては、小野道風や藤原行成などの上代様の書法を研究し、さらに南宋の張即之の書風を取り入れ、独自の書風「尊円流」または「青蓮院流」を確立しました。青蓮院流は、後世の書道に大きな影響を与え、その美しさは今日でも高く評価されています。

現存する著作・書写作品

現在に伝わる尊円法親王の著作や書写作品には、以下のようなものがあります。

金沢文庫切（巻子万葉集切）
巻物切（古今[[和歌集]]）
経切
入木抄
鷹手本（西本願寺所蔵、重要文化財）
門葉記（原本は青蓮院、奈良国立博物館所蔵、重要文化財）

これらの作品は、尊円法親王の優れた書道技術と、当時の文化を知る上で貴重な資料となっています。

尊円法親王の生涯

尊円法親王は、皇族、僧侶、書道家として、多岐にわたる分野で優れた才能を発揮しました。青蓮院の内部抗争という困難な時代背景の中、その運命は翻弄されながらも、独自の書風を確立し、後世に大きな遺産を残しました。その生涯は、日本の歴史と文化を語る上で、重要な一章となっています。

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