尊室説

尊室説（そんしつ せつ、ベトナム語：Tôn Thất Thuyết、1839年5月12日 - 1913年3月）は、ベトナム阮朝の官僚であり、字は博英（Bác Anh）と称しました。彼は、咸宜帝の時代に勤王運動を提唱し、ベトナムの独立回復を強く志しました。

生涯

尊室説は、明命20年（1839年）に、尊室訂の次男として順化に生まれました。彼の家系は、広南国主阮福瀕の末裔にあたります。嗣徳35年（1883年）に嗣徳帝が崩御すると、尊室説は阮文祥、陳践誠と共に輔政大臣に就任しました。阮文祥が官僚の人事を掌握したのに対し、尊室説は軍事力を掌握しました。

嗣徳帝には実子がなかったため、3人の甥（阮福膺禛、阮福膺豉、阮福膺登）を養子としました。当初、3人の大臣たちは阮福膺禛を擁立して育徳帝として即位させましたが、わずか3日で廃位し、嗣徳帝の弟である協和帝を擁立しました。しかし、大臣たちの専横に不満を持った協和帝は、尊室説の軍権を奪おうとしたため、尊室説と阮文祥は協和帝を殺害し、代わりに阮福膺登を擁立し建福帝としました。さらに、建福帝の擁立に反対した陳践誠も殺害されました。

建福帝もまた、2人の摂政に不満を抱き、阮文祥を排除しようとしましたが、学妃に毒殺されてしまいました。次に擁立された咸宜帝の時代に、尊室説はフランスによる植民地化に対し、勤王運動を開始しました。彼は檄文を発し、フランスへの徹底抗戦を訴え、咸宜帝を連れて山奥の新所城へ逃れ、援軍を求めました。これに対しフランスは、阮福膺豉を同慶帝として擁立しました。

尊室説の子である尊室談と尊室詥も、咸宜帝と共に抗仏運動を続けましたが、同慶2年（1887年）11月、尊室説は清へと渡り、援軍を要請しました。しかし、翌同慶3年（1888年）に咸宜帝がフランス軍に捕らえられると、尊室談と尊室詥は殉死しました。

尊室説はその後、清で余生を過ごし、維新7年（1913年）に広東省連州でその生涯を閉じました。彼の生涯は、ベトナムの独立を求める激しい抵抗の象徴として、歴史に深く刻まれています。

脚注

参考文献

Chapuis, Oscar (2000). The Last Emperors of Vietnam: from Tu Duc to Bao Dai. Greenwood Press. ISBN 0-313-31170-6
陳仲金 著、戴可来 訳『越南通史』1992年。ISBN 7-100-00454-3。

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