尊秀王

尊秀王（たかひでおう / そんしゅうおう）

尊秀王は、生没年不詳の後南朝の指導者であり、嘉吉3年（1443年）の禁闕の変後に南朝側の総大将となりました。源尊秀、鳥羽尊秀とも呼ばれています。

生涯

尊秀王に関する記録は限られています。

伏見宮貞成親王の日記『看聞日記』には、「南方謀反大将號源尊秀」と記されており、追討綸旨にも「號源尊秀」とあることから、源尊秀と名乗っていたことがわかります。

また、『東寺執行日記』には「南方高秀沙汰之」とあり、「尊秀」は「たかひで」と読むことがわかります。

出自や生涯についてはほとんど不明ですが、中原康富の日記『康富記』には、「後鳥羽院皇胤云々、鳥羽尊秀ト號云々」とあり、後鳥羽天皇の皇胤を自称し、鳥羽尊秀と号していたことがうかがえます。

赤坂恒明は、尊秀王が王（ショウ王）の子孫であるならば、王の母である宝姫女王、あるいは王の父である大豊王の母である伊子女王を但馬の雅成親王の一族と仮定すれば、女系を通じて後鳥羽天皇の子孫と考えることができるとしています。また、尊秀王の名字である鳥羽は、惟明親王の称号である鳥羽三宮に由来すると考えられるとしています。

森茂暁は、尊秀王の目的は皇籍復帰、ひいては皇位獲得にあったのではないかと推測しています。

尊秀王は、長禄の変で討たれた自天王と同一人物であるという見方がありますが、これは根拠がありません。『大日本史』の編纂にも従事した菅政友は、『南山皇胤譜』において「尊秀王ヲ自天王ニ当テシハ誤ナリ、尊秀王ハ嘉吉三年叡山ニテ討レ給ヘリ」と述べており、これが一般的な見解となっています。

しかし、宮内省臨時帝室編修局御用掛を務め、『明治天皇紀』の編纂にも携わった本多辰次郎は、『勤王論之発達』において、「当時行方不明と成った神璽は恐くは、この鳥羽尊秀が奉持して、逃亡したのであらう、是が後の康正・長禄の事件の起原となるのである」と述べています。禁闕の変後、尊秀王が行方不明になったこともあり、尊秀王＝自天王という憶測が生まれる余地を残しています。

尊秀王が禁闕の変後に行方不明になったという記述は、『康富記』に「鳥羽ハ暗跡落失不知行方云々」とあることに基づいています。一方、菅政友が述べるように、尊秀王は比叡山で討たれたという説もあり、『東寺長者補任』には「大将南方高秀也、頸取之」とあり、『看聞日記』にも「南方人主と称する人、僧体之宮々、日野一品禅門以下凶徒討取」とあり、それぞれ禁闕の変で討死したとしています。

参考文献

菅政友『菅政友全集』国書刊行会、1907年11月。
本多辰次郎『勤王論之発達』日本学術普及会〈歴史講座〉、1916年8月。

外部リンク

* 東寺長者補任 2巻 - 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ

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