小名浜駅

小名浜駅は、福島県いわき市小名浜に所在する福島臨海鉄道の主要な貨物駅であり、同鉄道網において中核的な役割を担っています。

この駅の歴史は古く、1907年（明治40年）12月1日に開業しました。大正時代には、1916年（大正5年）4月17日から江名までの間に馬車鉄道が運行されていましたが、これは1936年（昭和11年）12月9日に廃止されています。昭和に入ってからも、1941年（昭和16年）6月には新線への切り替えに伴う移転を経験し、1953年（昭和28年）1月12日には栄町駅までの区間が開業しましたが、この区間は1966年（昭和41年）2月15日に休止され、1968年（昭和43年）7月1日には正式に廃止となりました。貨物駅としての機能強化も進められ、1968年（昭和43年）1月10日にはコンテナ貨物の取り扱いが開始されていますが、旅客営業については1972年（昭和47年）10月1日をもって終了しています。

駅にとって最大の転換点となったのは、2011年（平成23年）3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震（東日本大震災）でした。この震災によって引き起こされた2メートルを超える津波が駅構内を襲い、壊滅的な被害を受け、運転休止を余儀なくされました。しかし、復旧に向けた取り組みが進められ、翌2012年（平成24年）2月1日には運転を再開するに至ります。

震災からの復興事業が本格化する中で、駅の機能強化と防災の観点から駅を移転させる計画が持ち上がりました。工事が進められた結果、2015年（平成27年）1月13日には、元の位置から約600メートル西方に移転した新しい駅での営業が開始されました。この移転により、隣接する泉駅との間の営業キロが従来の5.4キロメートルから4.8キロメートルへと短縮されました。また、この移転に伴い、それまで宮下駅に接続していた東邦亜鉛関連の専用線が小名浜駅に直接接続するように改められ、これにより宮下駅は廃止されています。旧駅の跡地は、現在は防災機能も兼ね備えた大型商業施設（イオンモールいわき小名浜）として整備され、地域の活性化に貢献しています。

移転後の小名浜駅は、約4.6ヘクタールの敷地を有し、コンテナホーム1面2線を含む合計5本の線路が敷設されています。駅構内には、機関車検修庫や貨車検修庫といった車両のメンテナンス施設、さらに福島臨海鉄道の本社機能を持つ2階建ての建物、そして複数の倉庫が配置されており、貨物輸送に必要な機能が集約されています。専用線の再編により、東邦亜鉛小名浜製錬所への貨物列車は直接当駅で取り扱われるようになりました。

現在、当駅で取り扱われる貨物は主にコンテナ貨物と車扱貨物です。コンテナ貨物としては、一般的な12フィートコンテナに加え、20フィートや30フィートの大型コンテナ、さらには20フィートおよび40フィートのISO規格海上コンテナといった多種多様なものが扱われています。車扱貨物としては、東邦亜鉛の専用線を発着する貨車や、当駅で整備が行われる私有貨車などが取り扱われています。また、産業廃棄物や特別管理産業廃棄物の取り扱い許可も取得しており、幅広いニーズに対応しています。

かつては、現在の三菱ケミカル小名浜事業所の前身である日本化成小名浜工場への専用線が存在し、この専用線は工場内を通り抜け隣の宮下駅まで繋がっていました。また、駅南側の小名浜港埠頭へ向かう構外側線も伸びており、ここからは埠頭内の倉庫や、宇部三菱セメント、太平洋セメントのサービスステーションへの専用線が分岐していました。特に太平洋セメント専用線からは内原駅へセメント輸送が行われていましたが、これは2000年3月に廃止されています。

駅周辺には、小名浜港に関連する行政機関や公共施設が集積しており、小名浜郵便局、小名浜税関支署、福島海上保安部、福島県警察本部水上警察隊、いわき市消防本部小名浜消防署、福島運輸支局小名浜庁舎（海事部門管轄）などが位置しています。主要な道路としては、福島県道156号小名浜港線、福島県道26号小名浜平線、福島県道15号小名浜四倉線などが通じています。また、観光施設として「いわき小名浜みなとオアシス」や「アクアマリンふくしま」も近く、地域のランドマークとなっています。近隣には三菱ケミカル小名浜事業所もあり、新常磐交通の「信用金庫」バス停も利用可能です。

福島臨海鉄道本線における隣の駅は泉駅であり、当駅はこの路線において貨物輸送の要衝として重要な役割を果たし続けています。

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