小川是

小川是（おがわ ただし）：激動の時代を駆け抜けた銀行家・元大蔵官僚

小川是は、昭和15年（1940年）2月26日に東京で生まれ、2017年8月21日に77歳で亡くなった、日本の銀行家、元大蔵官僚です。国税庁長官、大蔵事務次官、日本たばこ産業代表取締役会長、横浜銀行取締役会長など、数々の要職を歴任し、その卓越した手腕で日本の経済界に大きな足跡を残しました。

生い立ちと学歴

小川是は、裁判官の小川善吉を実父に、元参議院議員の三治重信を義父に持ち、恵まれた環境で育ちました。新宿区立牛込仲之小学校、東京教育大学附属中学校（現・筑波大学附属中学校）、東京都立戸山高等学校を経て、1962年に東京大学法学部第2類（公法コース）を首席で卒業しました。東大法学部在学中には、国家公務員上級試験にも2位で合格しており、その優秀さが伺えます。

大蔵省入省から事務次官へ

大学卒業後、小川は1962年に大蔵省に入省し、銀行局を振り出しにキャリアをスタートさせました。その後、竹下登大蔵大臣秘書官、主計局主計官兼法規課長などを歴任。1983年には、梅沢節男主税局長の下で主税局税制二課長に就任し、税制改正に深く関わるようになりました。1986年には主税局総務課長となり、売上税法案の起草に携わりました。その後、竹下内閣で首相秘書官を務め、1990年からは大臣官房審議官（主税局担当）、大臣官房総務審議官などを歴任。1992年には証券局長に就任し、当時の“証券スキャンダル”の処理にあたり、その手腕を発揮しました。

1993年には主税局長に、1995年には国税庁長官に就任し、1996年1月には大蔵事務次官に就任しました。篠沢恭助の任期途中での辞任を受けての就任でしたが、その実績と能力は高く評価されていました。1997年に大蔵省を退官しました。

大蔵省退官後

大蔵省退官後は、2000年6月に日本たばこ産業顧問、2001年6月に日本たばこ産業代表取締役会長に就任しました。2005年6月には横浜銀行頭取、2007年6月には全国地方銀行協会会長、2011年6月には横浜銀行会長に就任し、金融界でもその存在感を示しました。

人物像

小川は、主税局で長くキャリアを積んだことから、「主税畑のエース」として知られています。しかし、若い頃は主税局を苦手としていたという意外な一面も持ち合わせています。しかし、英国大使館からの帰国を機に主税局でのキャリアをスタートさせることになりました。主税局税制二課長時代には、物品税の時代遅れを痛感し、売上税への政策シフトを決断しました。その後、売上税法案の作成に尽力しましたが、野党と世論の反対により導入は断念されました。

総務審議官時代には、証券取引等監視委員会の発足に尽力し、大蔵省の下で発足させることに成功しました。

大蔵省入省同期

小川の大蔵省入省同期には、津野修（内閣法制局長官）、藤井威（内閣官房内閣内政審議室長）、藤原和人（国土事務次官）、江沢雄一（国際金融局長）、吉田道弘（関税局長）など、錚々たるメンバーが名を連ねています。

家族

小川家は三重県員弁郡梅戸井村（現・いなべ市）出身で、父は裁判官の小川善吉、母は中島謙太の長女・小枝です。妻は労働官僚、政治家であった三治重信の娘です。

その他役職

小川は、預金保険機構運営委員、防衛人事審議会委員、全国銀行協会副会長など、数多くの役職を兼務し、幅広い分野で活躍しました。

小川是は、その卓越した能力と幅広い知識、そして、激動の時代を生き抜いた経験から、日本の経済界に大きな影響を与えた人物として、その功績は長く語り継がれるでしょう。

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