小川正隆

小川正隆は、1925年に静岡県で生まれ、2005年に生涯を閉じた日本の美術評論家です。東京大学を卒業後、1950年に朝日新聞社に入社し、学芸部で美術担当の編集委員として活躍しました。この間、美術に関する深い知識と卓越した批評眼を培い、日本の美術界に大きな影響を与えました。

1980年には、富山県立近代美術館の初代館長に就任し、美術館運営に手腕を発揮しました。その後、1988年には嵯峨美術短期大学の学長に就任し、後進の育成にも尽力しました。また、小川正隆は「浜村順」という別名でも知られており、この名義で多くの著書や編著を出版しています。

小川正隆の著作活動は非常に多岐にわたり、西洋美術から日本美術、そして現代美術まで幅広い分野を網羅しています。

主な著書としては、以下のようなものが挙げられます。

『ヴィナス ギリシャ彫刻の歩み』(1964年、社会思想社) - 浜村順名義で刊行され、ギリシャ彫刻の歴史を詳細に解説した一冊です。
『原色版美術ライブラリー 第20 抽象絵画』(1956年、みすず書房) - 浜村順名義で編著を担当。抽象絵画の入門書として、広く読まれました。
『ピカソ 写真で見る人間の記録』(1958年、角川書店) - 浜村順名義で編著。ピカソの生涯と作品を写真とともに紹介しています。
『世界の美術』シリーズ（河出書房新社） - イタリア美術、ロダン、マイヨールなどを取り上げ、西洋美術への深い造詣を示しました。
『世界美術全集』シリーズ（河出書房新社） - ルノワールやモディリアーニ、ユトリロといった画家の作品を詳細に解説しました。
『人間国宝・伝統工芸』(1967年、美術出版社) - 杉村恒の写真とともに、日本の伝統工芸を紹介しました。
『現代日本美術全集 12 梅原竜三郎』(1971年、集英社) - 梅原竜三郎の画業を詳細に解説しました。
『世界の名画 16 ルオーとフォーヴィスム』(1973年、中央公論社) - 遠藤周作、高階秀爾との共著で、ルオーとフォーヴィスムについて考察しました。
『日本の名画』シリーズ（講談社、中央公論社） - 林武、杉山寧、安井曽太郎、梅原龍三郎、東山魁夷など、日本の著名な画家たちの作品を解説しました。
『新潮美術文庫 2 ボッティチェルリ』(1975年、新潮社) - ボッティチェッリの作品と生涯を解説しました。
『巨匠の名画 7 ルソー』(1977年、学習研究社) - 嘉門安雄との共編で、ルソーの絵画世界を詳細に分析しました。
『カンヴァス日本の名画 26 杉山寧』(1979年、中央公論社) - 谷川徹三との共著で、杉山寧の画業を多角的に考察しました。
『現代日本画全集 第15巻 高山辰雄』(1981年、集英社) - 高山辰雄の作品世界を解説しました。
『20世紀日本の美術 3 杉山寧/松岡映丘』(1987年、集英社) - 永井信一との共編で、杉山寧と松岡映丘の画業を比較考察しました。
* 『美しい日本 風景画全集5』(1988年、ぎょうせい) - 下平正樹との共編で、日本の風景画の魅力を紹介しました。

これらの著作からもわかるように、小川正隆は美術評論家として、幅広い知識と深い洞察力を持っていました。彼の著作は、美術史の研究者や愛好家にとって貴重な資料となっています。また、美術館運営や教育活動を通じて、日本の美術界の発展に大きく貢献しました。

小川正隆の業績は、その卓越した批評眼と幅広い知識、そして後進の育成に対する情熱によって、今日においても高く評価されています。

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