小幌駅

小幌駅：秘境に佇む駅の物語

小幌駅は、北海道虻田郡豊浦町に位置するJR北海道室蘭本線の駅です。その特異な立地から「秘境駅」として知られ、鉄道ファンや旅人を魅了し続けています。

概要

小幌駅は、「礼文華山トンネル」と「新辺加牛トンネル」という二つの長大トンネルに挟まれた、わずか80メートルの空間に位置しています。三方を急傾斜地に囲まれ、一方を内浦湾に面しているため、鉄道と船舶以外の交通手段でのアクセスは極めて困難です。この隔絶された環境が、秘境駅としての魅力を際立たせています。

歴史

小幌駅は、1943年に信号場として開設されました。当時、戦時下の軍需輸送が急増し、輸送力増強のために室蘭本線・函館本線には多くの列車が運行されていました。しかし、トンネルが連続する区間では、蒸気機関車をトンネル内に停車させる信号所の設置が難しく、複線化も困難でした。そこで、勾配が比較的緩く、蒸気機関車をトンネル外で停車させられる小幌地区に信号場が設けられたのです。

戦後、1987年に国鉄分割民営化によりJR北海道に移管され、旅客駅に昇格しました。しかし、利用者の減少に伴い、2015年には廃止の可能性が示唆されました。地元の豊浦町は、駅を観光資源として存続させるため、JR北海道と協議を重ね、費用の負担や人的支援を行うことで、当面の間、駅の存続が決定しました。

駅構造

小幌駅は、相対式ホーム2面2線を有する地上駅です。ホームは千鳥式に配置されており、構内踏切で連絡しています。駅舎や待合室はなく、保線用の小屋とバイオトイレが設置されています。列車接近時には、踏切警報機が作動し、自動放送が流れます。

かつては信号場として機能していたため、複雑な配線が残っています。トンネル内に分岐する線路や、閉鎖されたトンネルの入口などが、その歴史を物語っています。

利用状況

小幌駅の利用者は、鉄道ファンや釣り人がほとんどです。しかし、近年では秘境駅として注目されるようになり、観光客も訪れるようになっています。駅の維持にはコストがかかりますが、保線作業員にとっても重要な拠点となっています。

駅周辺

小幌駅の周辺には、手付かずの自然が残っています。駅から海岸に降りることができ、岩屋観音や小幌海岸などの景勝地を訪れることができます。かつては海岸沿いに集落やキャンプ場がありましたが、1970年代までに消滅し、現在は無人となっています。

豊浦町では、小幌駅を観光資源として活用するため、様々な取り組みを行っています。列車で駅を訪れるツアーや、徒歩で駅を目指すツアーなどが開催され、多くの人々がその魅力を体験しています。

秘境到達証明書

小幌駅を訪れた記念として、「秘境到達証明書」が発行されています。駅名標を背景に撮影した写真を持参すると、道の駅とようらや天然豊浦温泉しおさいなどで証明書を受け取ることができます。

小幌駅を扱った作品

小幌駅は、その特異な魅力から、多くの書籍や番組で取り上げられています。

『秘境駅へ行こう!』（牛山隆信）：秘境駅ランキング1位として紹介されています。
『鉄子の旅』（菊池直恵）：漫画作品に登場します。
* 『北の無人駅から』（渡辺一史、並木博夫）：紀行ノンフィクション作品で紹介されています。

まとめ

小幌駅は、その秘境感あふれるロケーションと、歴史的な背景を持つ魅力的な駅です。存続の危機を乗り越え、今もなお多くの人々を魅了し続けています。ぜひ一度、訪れてみてはいかがでしょうか。

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