小泉信吉

小泉信吉（こいずみ のぶきち）

小泉信吉は、1849年2月25日（嘉永2年2月3日）に生まれ、1894年（明治27年）12月8日に46歳で亡くなった人物です。彼は、慶應義塾長、横浜正金銀行支配人として活躍し、日本の近代化に大きく貢献しました。また、経済界においても重要な役割を果たしました。

生い立ちと教育

小泉信吉は、紀伊国紀州藩（現在の和歌山県）の藩士、小泉文庫の息子として生まれました。幼少期から学問に優れ、神童と呼ばれていました。1866年（慶応2年）には、福澤諭吉が開いたばかりの蘭学塾（後の慶應義塾）に入塾し、洋学を学びました。当時、紀州藩からの藩費留学生は多くいましたが、小泉は特に優秀で、戊辰戦争が始まった際にも福澤諭吉の取り計らいで江戸に留まることができました。その後、大阪舎密学校、大学南校、開成学校で教鞭を執りました。

海外留学と井上馨との出会い

1874年（明治7年）12月、小泉は紀州徳川家の援助を受け、中上川彦次郎とともにイギリスのロンドンに留学しました。彼はキングス・カレッジ・ロンドンで学びました。この留学は、福澤諭吉が紀州徳川家に働きかけたことで実現しました。福澤は甥である中上川の留学には当初反対でしたが、小泉と同行するならばと条件付きで承諾しました。

ロンドン滞在中、小泉と中上川は元老院議官の井上馨と親交を深めました。井上は江華島事件の後、日朝修好条規締結のためロンドンを訪れており、そこで小泉らと交流しました。毎週土曜日に井上の自宅で勉強会が開かれ、彼らの関係はより緊密なものとなりました。

帰国後の活躍

1878年（明治11年）に帰国した小泉は、井上馨に抜擢され、大蔵省奏任御用掛に就任しました。彼はイギリスの生命保険事業について研究しました。1880年（明治13年）に横浜正金銀行が設立されると、副頭取として経営に参画しました。その後、ロンドン支店設立のために再び渡英し、帰国後には大蔵省に戻り、奏任御用掛、主税官を歴任しました。

1890年（明治23年）には日本銀行取締役に就任しました。当時、日銀の経営を巡り大蔵大臣松方正義と対立した第二代総裁の富田鉄之助が辞任すると、松方は小泉を含む多くの人材を日銀に迎え入れました。1892年（明治25年）には横浜正金銀行本店支配人に就任しました。

慶應義塾長としての活動

小泉信吉は、交詢社の設立発起人にも名を連ねました。また、1887年（明治20年）には慶應義塾評議員に選出され、慶應義塾長に就任しました。しかし、採点法の改正を巡り普通科生徒の同盟休校が起こり、福澤諭吉との大学運営に関する意見の相違も生じたため、わずか2年で辞任しました。

死去と評価

1894年（明治27年）、小泉信吉は腹膜炎のため46歳で亡くなりました。彼の墓は多磨霊園にあります。福澤諭吉は、小泉を「慶應義塾の精神を代表する人物」と高く評価しており、その信頼は厚いものでした。小泉は、紀州出身の学生たちと和歌山学生会を結成し、在京特別会員としても活躍しました。

家族

小泉信吉の息子は小泉信三であり、その妻は明治生命保険創立者阿部泰蔵の娘です。娘婿には、松本荘一郎の子の松本烝治（満鉄副総裁）、横山久太郎の子の横山長次郎（三陸汽船社長）、佐々木勇之助の子の佐々木修二郎（第一銀行副頭取）がいます。

関連事項

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