小笠原長行

小笠原長行（おがさわら ながみち）

小笠原長行は、江戸時代末期に唐津藩の藩士であり、後に江戸幕府の老中、外国事務総裁を務めた人物です。

生涯

老中就任まで

文政5年（1822年）5月11日、肥前国唐津藩主・小笠原長昌の長男として唐津城で誕生しました。幼名は行若と名付けられました。父・長昌の死後、藩主の座は養子が継ぐこととなり、長行は庶子として扱われました。しかし、幼少の頃から明敏であったことから、天保9年（1838年）に江戸に出て朝川善庵に師事しました。安政4年（1857年）には、藩主の養嗣子となり、藩政に携わるようになり、その名声を高めました。文久2年（1862年）には、世嗣の身分のまま、幕府の役職である奏者番から若年寄、そして老中へと昇進しました。同年には、生麦事件が発生し、長行は事態の早期解決のために、幕府に無断でイギリスに賠償金を支払いました。

武装上洛、長州征討

文久3年（1863年）5月、長行はイギリスから借り入れた汽船を含む艦隊を率いて海路で上京しました。当時、将軍徳川家茂は京都で人質に近い状態に置かれており、この行動は尊王攘夷派の勢力を一掃するための武力制圧を目的としたものでした。しかし、在京幕閣の反対に遭い、家茂からも上京を差し止められたため、計画は失敗に終わりました。長行は老中を罷免されました。

元治元年（1864年）、長行は謹慎を解かれ、壱岐守となりました。慶応元年（1865年）には再び老中となり、長州征討の対応に当たりました。慶応2年（1866年）には、長州処分に関する幕命を伝えるために広島へ赴きましたが、長州藩は命令に従わず、長州征討が開始されました。長行は小倉口の総督として、幕府軍や九州諸藩の軍勢を指揮しましたが、諸藩をまとめきれず、長州軍に敗北し、戦線を離脱しました。この敗戦の責任を問われ、長行は老中を罷免されましたが、徳川慶喜の意向により、後に再任されました。

戊辰戦争とその後

将軍徳川家茂の後継問題では、長行は慶喜を次期将軍に推し、慶喜政権では外交担当の老中として欧米諸国との交渉に当たり、外国事務総裁にも任じられました。大政奉還後、長行は非戦を主張しましたが、戊辰戦争が勃発しました。唐津藩は新政府軍の討伐対象となりましたが、藩主・小笠原長国は長行との養子関係を解消し、新政府に降伏しました。長行は徹底抗戦を主張しましたが、受け入れられず、老中を辞任しました。江戸を離れ、奥州へ向かい、奥羽越列藩同盟に参謀として参加し、新政府軍と戦いました。会津戦争で旧幕府軍が敗れると、長行は箱館へ逃れましたが、箱館政権には参加しませんでした。箱館戦争で旧幕府軍が敗北すると、長行はアメリカの汽船で脱出し、潜伏生活を送りました。

明治5年（1872年）に東京に戻り、新政府に自首しましたが、小笠原長国らの赦免運動により赦免されました。その後は東京で隠棲し、晩年は静かに過ごしました。明治24年（1891年）に70歳で亡くなりました。

系譜

父：小笠原長昌
母：松倉氏
養父：小笠原長国
義弟：小笠原胖之助
妻：満寿子
次男：静
長女：艶子
三男：丁
四男：壬午郎
妾：美和
長男：小笠原長生
生母不明の子女：次女 能勢子

小笠原長行が登場する作品

映画

『小笠原壱岐守』（1932年）

テレビドラマ

『篤姫』（2008年）
『花燃ゆ』（2015年）

小説

徳永真一郎「小笠原長行」（1982年）
滝口康彦『流離の譜』(1984年)
山田風太郎『明治断頭台』（1979年）

関連項目

幕政改革

外部リンク

唐津の八偉人／唐津市

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