小野蕪子

小野蕪子（おの ぶし）

小野蕪子（1888年7月2日 - 1943年2月1日）は、大正から昭和初期にかけて活躍した日本の俳人です。本名は小野賢一郎（おの けんいちろう）といいます。

生涯

福岡県遠賀郡蘆屋村（現在の芦屋町）で生まれました。16歳で小学校準教員検定試験に合格し、代用教員となります。その後、1908年に大阪[[毎日新聞]]経営の毎日電報社に入社し、記者として活動を始めました。連載記事「萬龍物語」を執筆し、文筆家としての名声を確立します。

1911年に毎日電報が東京日日新聞社に吸収されると（毎日新聞を参照）、小野は同紙で連載小説「溝」（1911年）や「蛇紋」（1912年）などを執筆しました。この頃、谷崎潤一郎と親交を深め、小説家への転身も考えましたが、上司の助言により新聞社に留まりました。26年間勤続し、社会部長を長く務めました。当時の部下には子母沢寛がいました。1919年には欧米を旅行しています。

俳句は原石鼎の指導を受け、1918年に俳誌「草汁」を創刊。1927年には「虎杖」の選者となり、1929年に「鶏頭陣」と改題して主宰しました。「健康なる俳句」を提唱し、俳句の世界に新たな風を吹き込みました。

1935年には妻の多枝を亡くし、1938年には日本放送協会（当時社団法人）に文芸部長として迎えられました。1941年には同業務局次長兼企画部長に就任し、第二次世界大戦中は日本俳句作家協会の常任理事、後に日本文学報国会俳句部会の審査委員を務めました。1943年、54歳でその生涯を閉じました。

俳句の分野だけでなく、陶芸や古美術にも深い関心を持ち、評論家としても活動しました。陶芸に関する著書として『陶芸全集』を刊行しています。

新興俳句弾圧事件

新興俳句運動やプロレタリア俳句運動に対する新興俳句弾圧事件（京大俳句事件）において、小野は黒幕、あるいは特別高等警察への密告者であるとされています。戦後、水原秋櫻子や中村草田男などの多くの俳人から、小野が「特高のブラックリストを見た」などと恫喝していたことが明らかになりました。また、小野は俳壇の主導権を握ろうとし、草田男に「自分が逮捕状を預かっているから、おとなしくするがよい」と発言したとされています。

俳句作品

日本は南進すべし芋植うる（日本文学報国会編『俳句年鑑』収載）
エレベーターに相天上す御慶かな（『現代俳句集』収載）

著書

小野蕪子の著作の多くは、国会図書館デジタルコレクションで公開されています。

小説『溝』 (春陽堂、1912年)
女十篇・恋十篇（民声社、1915年)
女、女、女（興成館、1915年) - 「恋の照葉」「美妓萬龍」「東京の女」など
水の流れと（実業の世界社、1916年)
世界のぞ記（正報社、1919年)
洋行茶話（正報社、1920年)
明治・大正・昭和（1929年）
奥村五百子（先進社、1930年）
国宝巡礼記（私家版、1932年)
仏魔抄（双雅房、1935年)
やきもの読本（宝雲舎、1938年）
句集『松籟集』（私家版、1935年）
句集『雲煙供養』（宝雲舎、1941年3月）

編著

陶器全集（25巻、民友社、陶器全集刊行会、1931-1933年）和装本

出典

* 小野 賢一郎：作家別作品リスト - 青空文庫

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