小野錦喜三郎

小野錦 喜三郎（おのにしき きさぶろう）

大阪府大阪市住吉区出身の元大相撲力士、小野錦 喜三郎は、1922年3月20日に生を受け、1990年11月24日にその生涯を閉じました。本名は池川 善雄といい、176cm、98kgの体格で土俵を務め上げました。右四つからの投げや突き押しを得意とし、最高位は東前頭16枚目でした。

彼の相撲人生は16歳で始まり、1938年5月場所で陣幕部屋から初土俵を踏みました。しかし、入門後間もなく師匠である陣幕親方が死去したため、部屋の力士と共に小野川部屋へ移籍。その後、兄弟子の青葉山が陣幕部屋を再興した際に一時戻るものの、青葉山の引退により再び部屋が閉じられたため、最終的に再び小野川部屋に所属することとなりました。部屋を転々とする経験を持つ力士でした。

1943年、幕下まで番付を上げたところで兵役に就き、終戦まで土俵から離れることとなりました。1946年11月場所に三段目の地位で角界に復帰しましたが、幕下での足踏みが長く続きます。十両昇進を果たしたのは、実に32歳を迎えた1955年1月場所のことでした。

十両にはおよそ2年在位した後、1957年3月場所にて、34歳11か月という異例の高齢で新入幕を果たしました。これは、昭和戦後から平成にかけての新入幕力士としては破られていない最高齢記録です。また、幕内での初めての勝ち越しは35歳6か月で迎えた翌9月場所であり、これも2023年1月に東龍関に更新されるまで、戦後の幕内初勝ち越しにおける最年長記録でした。

幕内での在位は通算5場所に留まりましたが、得意の突っ張りや右四つからの投げ技を駆使して奮闘しました。十両へ降下した後も、長きにわたりその地位を維持し、自身が初土俵を踏んだ頃にはまだ生まれていなかった世代の力士たちとも多く対戦しました。後の大横綱である大鵬とも顔を合わせており、対戦成績は小野錦関の2勝1敗と勝ち越しています。

1960年3月場所で幕下へ陥落し、この場所を初日から休場。場所後に38歳で現役を引退しました。

引退後は、故郷である大阪市に戻り、相撲料理店「小野錦」を開業し、第二の人生を送りました。1990年11月24日、腎臓癌のため68歳で逝去しました。

エピソード・家族

新入幕を果たした1957年3月場所の直後に結婚。妻・寿美子さんとの間には、後に長男の清隆さんが生まれました。清隆さんの名前は、当時の横綱栃錦清隆関に因んで名付けられたと言われています。

また、趣味は昆虫飼育であり、特にコオロギやキリギリスを好んで飼っていたそうです。

長男の清隆さん（1957年12月20日生まれ）も、中学校卒業後に角界入りし、三保ヶ関部屋で芙蓉峰の四股名で力士として活躍しました。1973年9月場所で15歳で初土俵を踏み、約9年間の現役生活を送りましたが、関取の地位には届かず、最高位は東三段目29枚目でした。入門時の四股名は、父と同じ「陣ノ花」でした。相撲界を去った後は、父が開いた相撲料理店「小野錦」を継ぎ、店主となっています。清隆さんは1995年には人気料理番組『料理の鉄人』に出演し、料理の腕を競った経験もあります。

元横綱の北の富士勝昭氏が小野川部屋を訪れた際、冷蔵庫の中に「小野錦」とマジックで書かれたリンゴがあった、というエピソードも残されています。

主な成績・記録

現役在位：61場所
通算成績：356勝367敗20休（勝率 .492）
幕内在位：5場所
幕内成績：31勝44敗（勝率 .413）

四股名の変遷

陣ノ花（じんのはな）：1939年5月場所 - 1949年1月場所
陣乃花（じんのはな）：1949年5月場所 - 同年10月場所
* 小野錦（おのにしき）：1950年1月場所 - 1960年3月場所

彼の相撲人生は、兵役による中断、度重なる部屋の移籍、そして30歳を超えてからの躍進と、多くの困難とドラマに彩られていました。特に高齢での新入幕は、諦めずに努力を続ければ道が開けることを示す、後進への大きな励みとなる記録と言えるでしょう。

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