小電力データ通信システム

小電力データ通信システムとは

小電力データ通信システムは、無線局の一種であり、免許なしで利用できるものが該当します。総務省の電波法施行規則によって定義され、特定の周波数帯と出力制限の下でデータ通信を行うために使用されます。

定義

電波法施行規則第6条第4項第4号において、「主としてデータ伝送のために無線通信を行うもの（電気通信回線設備に接続するものを含む。）」と定義されています。具体的には、以下の周波数帯を使用し、空中線電力が0.58W以下であることが条件です。

1. 2,400MHz以上2,483.5MHz以下の周波数帯（無線標定業務を行う場合は、総務大臣の告示条件適合が必要）
2. 2,471MHz以上2,497MHz以下の周波数帯
3. 5,150MHzを超え5,350MHz以下、または5,470MHzを超え5,730MHz以下の周波数帯（一部、総務大臣の告示する周波数、場所の制限あり）
4. 5,925MHzを超え6,425MHz以下の周波数帯（総務大臣の告示条件適合が必要）
5. 24.77GHz以上25.23GHz以下の周波数帯（24.77GHzまたは24.77GHzに10MHzの整数倍を加えたもの）
6. 57GHzを超え66GHz以下の周波数帯

無線標定業務とは、ウェアラブル端末での心拍数や血圧測定、マウスなどのポインティングデバイスの変位検出など、センシングシステムとして利用されるものです。これらの周波数帯は、他の業務にも割り当てられているため、混信を防ぐための条件が定められています。

概要

小電力データ通信システムは、適合表示無線設備であり、技術基準適合証明を受けた特定無線設備である必要があります。主に無線LANで利用されますが、2.4GHz帯はコードレス電話やBluetoothなど、他の用途にも広く使われています。また、60GHz帯は以前はミリ波画像伝送用などに利用されていました。

技術基準は無線設備規則第49条の20に定められており、筐体が容易に開けられない構造であること（特殊ネジの使用など）が求められます。このシステムは日本独自の制度であるため、海外での使用は原則として許可されていません。ただし、外国規格に認証された機器の使用を妨げるものではなく、使用する国での認証状況を確認する必要があります。

電気通信回線に接続する機器は、電気通信事業法上の端末機器としても扱われ、技術基準適合認定も必要です。

種類

電波法施行規則第6条第4項第4号の各号ごとに、「特定無線設備、特別特定無線設備一覧」に設備概要が記載されています。小電力データ通信システムは、その多くが特別特定無線設備に分類されます。

標準規格

制度化当初から、電波産業会（ARIB）が技術基準を含めた標準規格を策定・公開しており、以下のような規格があります。

RCR STD-33: 小電力データ通信システム／ワイヤレスLANシステム
ARIB STD-T66: 第二世代小電力データ通信システム／ワイヤレスLANシステム
ARIB STD-T69: 小電力データ通信システム／ミリ波画像伝送用無線設備
ARIB STD-T72: 小電力データ通信システム/ワイヤレス1394システム
ARIB STD-T117: 小電力データ通信システム／60 GHz帯超高速スループットワイヤレスLANシステム

表示

適合表示無線設備には、技適マークと技術基準適合証明番号などが表示されている必要があります。小電力データ通信システムの記号は、技術基準適合証明番号の最初の1～2文字に表示されます。以前は工事設計認証番号にも表示が必要でしたが、現在は不要です。また、技術基準適合認定を受けた端末機器には、技術基準適合認定番号なども表示する必要があります。

技術基準

無線設備規則第49条の20に基づいた技術基準が適用されます。

通信方式

60GHz帯以外では、単向通信、単信、半複信、複信の各方式が利用可能です。60GHz帯については、特に規定はありません。

旧技術基準による機器の使用

2005年の技術基準改正で、旧基準に基づく適合表示無線設備の使用期限が設定されましたが、小電力データ通信システムは除外されています。これは、旧基準が新基準よりも厳しかったため、旧基準に適合する機器はそのまま使用可能と判断されたからです。使用期限はコロナ禍の影響で延期されましたが、除外条件は変更されていません。

電波法第4条の2に規定する特例

電波法第4条の2では、技術基準に適合する無線設備を免許不要とする特例が規定されており、小電力データ通信システムもその対象です。

訪日外国人の持ち込む機器: 一定の条件下で、訪日外国人による2.4GHz帯高度化および5GHz帯の機器使用が認められています。
技適未取得機器を用いた実験等の特例: 技術基準適合証明を受けていない機器でも、届出から180日以内であれば実験用無線局として使用可能です。

規制事項

小電力データ通信システムの機器は、筐体を容易に開けられない構造であることが求められています。利用者が改造や分解を行うことは禁止されています。技術基準適合証明を受けていない機器の使用は電波法違反となり、罰則の対象となります。また、技術基準適合認定がない機器は電気通信事業法により回線接続を拒否されることがあります。

他の業務との共存

小電力データ通信システムの周波数帯は、他の様々な業務と共用されています。混信などの優先順位は、ISMバンドの機器 ＞ 免許を要する無線局 ＞ 小電力無線局となります。ISMバンドは特に影響が大きく、電子レンジなどの動作中は干渉を受ける可能性があります。

免許局や登録局とも周波数帯を共用しており、混信を容認しなければならない場合があります。また、小電力無線局同士では、先に使用している方が優先されるのが原則ですが、混信を完全に回避することは難しい状況です。

沿革

1992年に小電力データ通信システムが制度化され、2.4GHz帯のみが対象でした。その後、技術の進歩とともに周波数帯の拡大や技術基準の改正が行われてきました。

1992年：制度化、2.4GHz帯のみ（記号GZ）
1993年：RCR STD-33策定
1995年：技適マークに統一
1999年：2.4GHz帯高度化追加（記号NY）、ARIB STD-T66策定
2000年：5GHz帯追加（記号WY）、ARIB STD-T69策定
2001年：ARIB STD-T72策定
2002年：準ミリ波帯追加（記号HX）
2004年：全て特別特定無線設備に
2005年：5GHz帯改正（記号WY）
2007年：5.6GHz帯追加（記号TW）、記号変更
2008年：模型飛行機用の技術基準追加（記号VV、UV）
2011年：工事設計認証番号への記号表示不要に
2013年：5GHz帯変更（記号HS）
2015年：空中線電力増大、60GHz帯追加（記号WU, WV）
2016年：訪日外国人の機器が免許不要に、ARIB STD-T117策定
2018年：現行の定義に
2019年：準ミリ波帯縮小、5GHz帯の記号改正
2020年：技適未取得機器の実験特例対象に、無線標定業務の追記
2022年：6GHz帯追加（記号YR、ZR）、5GHz帯の技術基準一部改正、記号XR

出荷台数

電波の利用状況調査で、定期的に出荷台数が公表されています。

脚注

（省略）

関連項目

小電力無線局
無線LAN
Bluetooth

外部リンク

電波産業会

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