尾張大隅

尾張大隅の人物像と功績

尾張大隅（おわり の おおすみ）は、飛鳥時代に活躍した氏族の一員であり、その業績により歴史に名を刻んだ人物です。彼の本名は尾治と表記されることもあり、後に姓に宿禰を加えられることになりました。尾張大隅の位階は贈従五位上であり、672年の壬申の乱においては、大海人皇子（後の天武天皇）に対して私邸を提供したことが特筆すべき功績とされています。

経歴と壬申の乱

尾張大隅が活躍した背景には、壬申の乱がありました。この乱は672年に発生し、大海人皇子が台頭するきっかけとなる重要な出来事です。『日本書紀』においては、尾張大隅の名前は記されていないものの、『続日本紀』には彼の功績が詳述されています。

具体的には、天武天皇が吉野宮を脱出して関東方面に向かう際、尾張大隅は彼のために私宅を用意し、さらには軍資を提供して支援しました。この行宮の場所については、美濃国の野上とする説や、伊勢国の鸕野讚良皇女（持統天皇）が住んでいた地とする説がありますが、いずれも尾張大隅の行動の影響を受けた場所として注目されています。

功績の承認と位階

天武天皇13年（684年）には、尾張大隅を含む連姓の50の氏族に対して宿禰の姓が授けられ、彼の地位と功績が正式に認められました。持統天皇10年（696年）には、天皇自らが尾張宿禰大隅に直広肆の位と水田40町を授け、その貢献を称えています。これにより、彼の名声はさらに高まり、氏族としての地位も向上しました。

霊亀2年（716年）には、尾張大隅の子である尾張稲置がその父の功によって田を授けられたことが記録されており、次世代への影響力も示されています。この際、尾張大隅は贈従五位上という位階で記されており、「贈」という言葉から、大隅がこの時点で故人であったことが理解されます。彼の没年は701年から716年の間と推測され、その死後も彼の業績は後世に語り継がれています。

尾引の記録と後世への影響

さらに、天平宝字元年（757年）には、太政官が尾治大隅の功田40町について審議し、その内容と意義が高く評価されました。結果として、その功績は三世代にわたって伝えられることが決定され、尾張大隅の名前は歴史の中で生き残ることとなります。

総じて、尾張大隅の生涯は飛鳥時代の政治動乱と深く結びついており、彼の行動は後世にわたって影響を残しました。彼の支援を受けた大海人皇子は後に天武天皇として歴史に名を残し、彼のような支援者の存在が歴史の行方を左右することを示しています。尾張大隅の功績は、今なお多くの文献で取り上げられ、古代日本史の中で重要な位置を占めています。

もう一度検索