居摂

居摂（きょせつ）は、中国の前漢、孺子嬰（じゅしえい）の治世に用いられた年号です。具体的には、紀元6年から紀元8年までの3年間を指します。この年号は、王莽（おうもう）が実権を掌握し、皇帝の職務を代行する「摂皇帝（せっこうてい）」という立場にあった時代に使用されました。

居摂の背景

王莽は、前漢の宣帝（せんてい）の皇后の一族出身であり、その政治手腕と人望によって徐々に権力を拡大していきました。平帝（へいてい）が早世すると、王莽は宣帝の玄孫である劉嬰（りゅうえい）を後継者に指名しますが、幼少であったため即位させず、「孺子（じゅし）」と号させます。そして自らは、周公旦（しゅうこうたん）が幼い成王（せいおう）の代わりに政治を行った故事に倣い、「摂皇帝」として政治の実権を握りました。

「居摂」という年号は、まさにこの王莽の政治姿勢を象徴するものです。周公が摂政の地位につき、周の成王の職務を代行した故事から、王莽が皇帝代行であるという意味で「居摂」元年に改元しました。

居摂時代の出来事

居摂の時代は、短いながらも政治的な動乱が相次ぎました。

居摂元年（6年）：王莽が摂皇帝に就任したことに反発し、安衆侯（あんしゅうこう）劉崇（りゅうすう）が反旗を掲げますが、これは鎮圧されました。
居摂2年（7年）：東都太守（とうとたいしゅ）の翟義（てきぎ）が、厳郷侯（げんきょうこう）劉信（りゅうしん）を天子に擁立して挙兵しますが、これも数ヶ月で鎮圧されました。これらの反乱は、王莽の権力掌握に対する不満の表れと言えるでしょう。
居摂3年（8年）：王莽は11月に居摂3年を初始元年に改元しました。これは、王莽が簒奪を正当化するための行動と考えられます。

西暦との対照表

居摂元年	居摂2年	居摂3年

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西暦6年	西暦7年	西暦8年

居摂から初始へ

居摂3年（8年）の12月、王莽はついに皇帝の位を簒奪し、国号を「新」と定めました。これに伴い、年号も「初始（しょし）」に改元されました。ここに、前漢は滅亡し、王莽による「新」の時代が幕を開けたのです。

居摂という年号は、王莽が皇帝の位を簒奪するまでの、権力掌握の過渡期を象徴するものであり、その後の「新」の時代の到来を予感させるものでもありました。

関連項目

元号一覧 (中国)

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