山形雄策

山形雄策

山形雄策（やまがた ゆうさく、1908年3月13日 - 1991年8月3日）は、日本の脚本家です。本名は町田敬一郎。

人物

山形雄策は、戦前と戦後で作風が大きく変化した脚本家として知られています。戦前は、主にホームドラマや、今井正監督らの戦意高揚映画の脚本を多数執筆しました。しかし、戦後は一転して東宝で左翼色の強い映画の脚本を担当し、社会派作品を多く手がけました。

キネマ旬報ベストテン入りを果たした『暴力の街』『真空地帯』『武器なき斗い』などの独立系作品の脚本を担当したことで、その名を知られるようになりました。また、映画評論家としても活動し、映画専門誌や日本共産党の理論誌などで評論を発表しました。

経歴

早稲田大学を中退後、松竹の映画監督であった島津保次郎が主宰するシナリオ塾で脚本について学びました。1939年に東宝に入社し、藤田潤一監督作品『愛の設計』で脚本家としてデビューしました。その後、東宝に移籍した島津保次郎監督作品『二人の世界』で初めて師と組み、脚本を執筆しました。

以後、『時の花形』『兄の花嫁』など、島津監督の作品を多く手がけました。また、『上海の月』では成瀬巳喜男監督、『結婚の生態』などでは今井正監督、『進め独立旗』では衣笠貞之助監督と組みました。戦後第1作は、佐伯清監督の『陽気な女』です。今井正監督の『民衆の敵』以降は、東宝労働組合の路線による映画の脚本を書きましたが、1948年の『わが愛は山の彼方に』を最後に、第3次東宝争議後はフリーとなりました。

日本映画演劇労働組合と日本映画人同盟が関与した映画『暴力の街』では、八木保太郎とともに脚本を担当しました。また、労働農民党の代議士・山本宣治を描いた『武器なき斗い』や『松川事件』などの作品で、独立プロの一時代を築きました。

1950年前後からは、映画専門誌に映画評論を発表するようになり、1960年代には、日本共産党の理論誌『前衛』や『文化評論』に、映画運動や文化運動に関する多くの評論を寄稿しました。

主な作品

『春よいづこ』（東宝映画東京、1940年）
『二人の世界』（東宝映画東京、1940年）
『兄の花嫁』（東宝映画東京、1941年）
『流旅の人々』（南旺映画＝第一協団、1941年）
『上海の月』（東宝映画東京＝中華電影、1941年）
『結婚の生態』（南旺映画、1941年）
『緑の大地』（東宝映画、1942年）
『望楼の決死隊』（東宝映画、1943年）
『進め独立旗』（東宝映画、1943年）
『怒りの海』（東宝、1944年）
『陽気な女』（東宝、1946年）
『民衆の敵』（東宝、1946年）
『明日を創る人々』（東宝、1946年）
『命ある限り』（東宝、1946年）
『地下街二十四時間』（東宝、1947年）
『わが愛は山の彼方に』（東宝、1948年）
『暴力の街』（ペン偽らず共同製作委員会1950年）
『真空地帯』（新星映画、1952年）
『赤い自転車』（第一映画、1953年）
『愛すればこそ　第二話　とびこんだ花嫁』（独立映画、1955年）
『愛すればこそ　第三話　愛すればこそ』（独立映画、1955年）
『台風騒動記』（まどかグループ＝山本プロ、1956年）
『武器なき斗い』（大東映画、1960年）
『松川事件』（松川事件劇映画製作委員会、1961年）
『赤い水』（大映、1963年）
『あしたの火花』（総評　全日本造船機械労働組合＝共同映画、1977年）
『巣立ちのとき　教育は死なず』（翼プロ＝長野プロ、1981年）
『パパママバイバイ』（映像企画、1984年）
『母さんの樹』（翼プロ、1986年）

著書

『日本シナリオ文学全集11 八木保太郎・山形雄策集』（「暴力の街」「真空地帯」所収、理論社、1956年）
シナリオ『武器なき斗い』（依田義賢との共作、1960年7月1日、『シナリオ』第16巻第7号掲載）
『山本薩夫演出の周辺』（シネ・フロント社、1984年）

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