山本丈晴の音楽作品

山本丈晴（やまもとたけはる）は、多才な音楽家として知られ、作曲家およびギタリストとして幅広い分野で活動を展開しました。その作品リストは、流行歌、歌謡曲、演歌といったポピュラー音楽から、映画、テレビドラマ、舞台のための劇伴音楽、さらにはコマーシャルソング、企業の社歌、学校の校歌、地域の歌に至るまで、非常に多岐にわたります。また、ギタリストとしても数多くの録音を残しており、特に自身の名を冠したギター演奏アルバムシリーズは広く知られています。

山本丈晴の音楽活動は、初期にはギタリストとしてのキャリアから始まりました。特に古賀政男との共演が多く、戦後の混乱期から復興期にかけて、古賀政男が作曲した多くの流行歌において、そのギター伴奏を務めています。この時期には、「古屋雅章」や「古賀丈晴」といった別名義も使用しており、霧島昇の「麗人の歌」（1946年）、近江俊郎の「湯の町エレジー」（1948年）、藤山一郎の「友情の歌」（1948年）など、後世に残る名曲の誕生にギタリストとして立ち会いました。古賀政男との息の合ったギターアンサンブルは、当時の流行歌の重要な要素でした。

作曲活動においては、「古賀丈晴」名義でコロムビア・ローズに提供した「さすらい乙女」（1955年）などが初期の例として挙げられます。その後、キングレコード専属時代には「古屋丈晴」や「山本丈晴」名義で多数の楽曲を手がけ、三橋美智也、春日八郎、若原一郎、大津美子といった当時の人気歌手に多くの作品を提供しました。この時期の作品には、「哀愁のフラメンコ」（林伊佐緒、1958年）、「さすらい流し」（三橋美智也、1961年）などがあります。

日本コロムビア専属期に入ると、山本丈晴名義での活動が中心となり、さらに多くの著名な歌手に楽曲を提供しました。小林幸子の初期のヒット曲や、美空ひばりの「風雪三代」（1967年）、「芸道一代」（1967年）、村田英雄の「浪花の勝負師」（1967年）、島倉千代子の「大阪夜曲」（1967年）など、歌謡界の第一線で活躍する歌手たちの代表曲を数多く生み出しました。また、テレビドラマの主題歌なども担当し、広く親しまれました。

専属契約にとらわれないフリーランスとなってからも、その創作意欲は衰えませんでした。映画『氷雪の門』の主題歌「九人の乙女」（1974年）や、北島三郎、松島恵美らへの楽曲提供など、幅広い活動を続けました。柔道関連の楽曲も複数手掛けています。

作曲活動の幅は、歌謡曲にとどまりません。映画音楽では1960年代に日活を中心に複数の作品の音楽を担当し、『銀座の次郎長』（1963年）、『けんかえれじい』（1966年）などのスコアを手がけました。テレビ音楽や舞台音楽の分野でも活躍し、特に明治座での長期公演の劇伴を数多く担当しました。晩年には、野口雨情の未発表詞に作曲を行うなど、新たな試みも行っています。

さらに、社歌、校歌、町歌といった、特定の組織や地域のための音楽も数多く作曲しています。長野県、山梨県、静岡県、北海道、兵庫県、宮崎県、山口県など、全国各地の学校や市町村、企業のために曲を作り、地域文化の振興や組織の一体感醸成に貢献しました。特に山梨県には多くの校歌や地域の歌を提供しており、深い繋がりがうかがえます。

ギタリストとしてのもう一つの重要な業績は、自身のリーダーアルバム「我が心ギターによせて」シリーズです。このシリーズは複数枚制作され、後にCD化されるなど、山本丈晴のギター演奏を代表する作品群となりました。古賀メロディーを中心とした叙情豊かな演奏は、多くの音楽ファンに愛されました。また、珍しい琵琶ギターを用いたアルバムも発表しており、楽器に対する探求心も持ち合わせていました。

このように、山本丈晴は作曲家、ギタリストの両面から、日本のポピュラー音楽史、映画・テレビ・舞台音楽、さらには地域音楽に至るまで、非常に多様な分野で重要な足跡を残した音楽家と言えるでしょう。その膨大な作品リストは、彼の多才さと精力的な活動を物語っています。

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