岡崎嘉平太

岡崎嘉平太：日中友好に尽力した不屈の経済人

岡崎嘉平太（1897年4月16日 - 1989年9月22日）は、日本の実業家であり、戦後の日中関係改善に大きく貢献した人物です。池貝鉄工、丸善石油という大手企業の経営再建、全日本空輸（全日空）の社長を歴任する傍ら、日中間の経済交流を推進し、両国関係の正常化に尽力しました。

生い立ちと青年時代

岡崎嘉平太は、岡山県賀陽郡大和村（現在の加賀郡吉備中央町）で、農業を営む岡崎鶴太郎の長男として生まれました。幼少期に家が全焼したことがきっかけで、吉備郡総社町（現在の総社市）へ移住。旧制岡山中学校、第一高等学校を経て、1922年に東京帝国大学法学部を卒業しました。

一高時代はボート部に所属し、中国人留学生との交流を通じて国際的な視野を養いました。この頃の経験が、後の日中関係改善への取り組みに繋がったと言えるでしょう。

日本銀行から大東亜省へ

大学卒業後、岡崎は日本銀行に入行し、営業局次長、外国為替部次長を歴任しました。しかし、日中戦争下の1939年に日銀を退職。上海に華興商業銀行を設立し、理事として中華民国維新政府統治下の上海へ赴任しました。太平洋戦争（大東亜戦争）中の1942年には、大東亜大臣となった旧知の青木一男に請われ、大東亜省参事官として日本へ帰国。翌1943年には汪兆銘政権下の上海へ領事館参事官として再び赴任し、終戦後は日本人の引き揚げ作業や、中華民国当局との交渉に奔走しました。

企業経営者として

1946年に帰国した岡崎は、経営危機に陥っていた池貝鉄工と丸善石油の社長に就任し、再建に尽力しました。戦後、公職追放されていたものの、池貝鉄工の再建に成功したことで特免を受けています。経営者としての手腕を発揮する傍ら、1954年には日本国際貿易促進協会の常任委員に就任し、日中間の経済交流推進に取り組みました。1962年には、全日空の社長を兼任したまま高碕達之助とともに訪中し、LT貿易協定を締結しました。

全日空社長としては、極東航空や藤田航空を吸収合併し規模を拡大させる一方、1966年に発生した2件の航空事故を受け、1967年に社長を辞任しました。

日中友好への尽力

岡崎嘉平太の最大の功績は、日中関係の改善に尽力したことです。1962年に日中貿易交渉の副団長として訪中した際、周恩来首相から感銘を受ける言葉を受け、以後、日中友好に生涯を捧げることを決意しました。1968年以降は日中覚書貿易事務所の代表として何度も訪中し、政界の古井喜実、田川誠一らとともに日中貿易の冬の時代を乗り越え、日中国交正常化に大きく貢献しました。周恩来首相とは「兄」「弟」と呼び合うほどの信頼関係を築き、民間レベルでの貿易構想「日中総合貿易に関する覚書（LT貿易）」を実現させました。

日中国交正常化の際には、田中角栄総理が中国を訪問する2日前に、周恩来首相が岡崎をもてなすために食事会を開き、「中国には『水を飲むときには、その井戸を掘ってくれた人を忘れない』という言葉があります。国交正常化という井戸を掘ったのは岡崎さん、あなたです」と感謝の言葉を述べました。その後も日中経済協会の常任顧問として日中貿易に携わり、生涯訪中回数は101回に達しました。

死去とその後

1989年9月22日、岡崎嘉平太は自宅の階段で転倒し、急性硬膜下血腫により92歳で亡くなりました。没後、正三位が贈られました。彼の功績を称え、1990年に岡崎嘉平太国際奨学財団が、2001年には生誕地の吉備中央町に岡崎嘉平太記念館が設立されました。また、全日空は岡崎の遺志を継ぎ、現在でも社員寮の一部を留学生に提供しています。

岡崎嘉平太は、激動の時代を生き抜き、日中関係の架け橋となった偉大な人物でした。彼の信念と行動は、今もなお、多くの人々に勇気と希望を与え続けています。

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