岩槻城

岩槻城：歴史と変遷を刻む武蔵の城

岩槻城は、埼玉県さいたま市岩槻区に位置する、歴史深い平山城です。元荒川に囲まれた岩槻台地の舌状台地上に築かれ、その戦略的な立地から、古くから重要な拠点として機能してきました。別名、岩付城、岩附城、浮城、白鶴城など、様々な呼び名を持ち、その歴史は鎌倉時代以前まで遡ると推測されています。

鎌倉時代以前から室町時代

『新編武蔵風土記稿』によると、寛元4年（1246年）の鐘銘に「武州埼玉郡［竹斯］輪郷岩付」の記述があり、この頃から既に岩付城と呼ばれていた可能性が示唆されています。室町時代には、古河公方・足利成氏に対抗する勢力によって築城されたとする説や、古河公方方の武将、成田氏によって築城されたとする説など、複数の説が存在します。史料解釈の相違から、築城時期や築城者については未だ議論が続いています。永正7年（1509年）には、古河公方奉公衆である渋江氏が城主となったと推測されています。

戦国時代の激動

戦国時代には、扇谷上杉氏と山内上杉氏の争いにより関東地方が戦乱に巻き込まれる中、1522年（大永2年）、太田資頼が岩槻城を掌握し、岩付太田氏の居城となります。その後、北条氏の勢力拡大に伴い、1546年（天文15年）の河越夜戦で北条氏が武蔵国を支配下に収める中、岩付城は太田資正（三楽斎）によって抵抗の拠点として機能しました。しかし、1564年（永禄7年）に資正の嫡子・太田氏資が北条氏康に内応し、資正を追放。岩付城は北条氏方の城となります。1590年（天正18年）の小田原征伐では、北条氏房付の宿老である伊達房実が城を守りましたが、豊臣軍の攻撃を受け、落城しました。

江戸時代と明治時代以降

北条氏滅亡後、徳川家康が関東に入ると、徳川譜代家臣である高力清長が2万石で岩槻城に入城しました。その後、青山氏、阿部氏、板倉氏、戸田氏、藤井松平氏、小笠原氏、永井氏など、多くの譜代大名が城主を務めました。江戸中期には大岡忠光が城主となり、廃藩置県まで大岡氏の居城となりました。天守閣はありませんでしたが、本丸には天守閣の代わりとなるような櫓が存在していました。明治時代以降は城址公園として整備され、現在も黒門や裏門などの遺構が残されています。一部は住宅地となっていますが、城址公園では、土塁や空堀跡を見ることができます。

城郭構造と周辺環境

岩槻城は、元荒川を利用した平山城で、総曲輪型の縄張りが特徴的です。城下町は、南西方向に武家屋敷、その外側に町人町が配置され、寺院は大構の要所に位置していました。城跡は本郭を中心に、二の丸、三の丸、そして複数の曲輪から構成され、沼地を利用した防御施設が築かれていました。「浮城」や「白鶴城」という別名は、城の周囲を水堀で囲まれた地形に由来すると言われています。城郭の規模は大きく、大構内は広大な面積を有していました。本丸には、複数の門や木戸が設けられ、厳重に警備されていました。中世には奥大道（鎌倉街道中道、奥州街道）、近世には日光御成街道沿いに位置していました。

別名と伝説

岩槻城の別名である「白鶴城」は、太田道灌が築城した際に、沼に舞い降りた白鶴の姿から名付けられたという伝説が残っています。しかし、『新編武蔵風土記稿』では、この説は後世の創作であるとされています。「岩付」という名称は、鎌倉時代から既に用いられていた可能性が高いと考えられています。

岩槻城址公園

岩槻城址公園は、岩槻城跡を含む広大な区域を整備した公園です。桜の名所として知られ、初夏にはスイレンが池を覆います。園内には、東武1720系電車の静態保存車両や、子供向けの遊具、からくり時計などが設置されています。また、毎年桜祭り、岩槻流しびな、人形供養祭などの行事が開催されています。公園内には、岩槻城に関する史料や遺構だけでなく、さいたま市民会館いわつき、野球場、テニスコート、公民館などの公共施設も整備されています。岩槻城址公園は、歴史と自然が融合した、魅力的な空間です。 様々な史跡や文化遺産も周辺に点在しており、岩槻の歴史を深く知ることができる場所となっています。

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