岩槻宿

岩槻宿：城下町と宿場町の融合

岩槻宿は、中山道の本郷追分から分岐する日光御成道の4番目の宿場として、現在の埼玉県さいたま市岩槻区に位置していました。岩槻城の城下町として整備されたこの地は、宿場町としての機能に加え、城下町特有の様相を呈していました。

地形と城下町の構造

岩槻城下町は、岩槻台地の舌状台地上に築かれ、北と東を元荒川が囲み、内側には帯曲輪がありました。南西方向を除いて沼（堀）に囲まれた地形は、防御に適していました。城下町は、南西方向が岩槻台地に連続し、武家屋敷が配置され、町人町はその外側の南西から西側、そして南東側に広がっていました。寺院は町人町の外縁や、大構（惣構）の要所に配置されていました。

岩槻周辺の河川は、東部を元荒川、西部を綾瀬川が流れています。地形は、サトと呼ばれる岩槻台地とノガタと呼ばれる沖積平野が複雑に入り組み、起伏に富んでいます。岩槻台地は北西から南東方向に細長く延び、雨水の浸食作用を受けて浸食谷が形成されています。

日光御成道の整備と岩槻宿の形成

日光御成道は、鎌倉街道をルーツとする古道を利用して整備されました。江戸時代寛永期以降、将軍の日光社参に利用されるようになり、「日光御成道」と称され、道中奉行の支配下に入りました。元和3年（1617年）には、徳川家康の遺骸が駿河の久能山から日光に移された際、2代将軍秀忠が初めて御成道を通行しました。

御成道は、中山道の本郷追分を起点とし、岩淵宿、荒川、川口、鳩ヶ谷、大門、岩槻を経て、幸手で日光街道に合流する、約43kmの道程でした。岩槻町は、大門と同様に天和2年（1682年）頃には御成道筋の宿場に指定されたと考えられています。

岩槻宿は、加倉口から城下に入ると市宿町、久保宿町と続き、この二つの町が岩槻宿を構成していました。他の城下七町は、岩槻宿の定助郷として市宿町と久保宿町に付属していました。

岩槻九町

天保14年（1843年）の『宿村大概帳』によると、当時の岩槻宿は城下九町の総称であり、宿内人別は3,378人、戸数は778軒でした。久保宿町には本陣と脇本陣がそれぞれ1軒ずつあり、旅籠屋は10軒ありました。岩槻宿の規模は東西11町、南北15町余りであり、文化・文政期には家数は560軒余りでした。用水は天水を利用し、六斎市が毎月1・6日に開かれ、ネギ、ゴボウ、米、木綿などが取引されました。

岩槻城下のまちづくりは、城主高力清長によって始まり、その後阿部氏に引き継がれ、城下九町が完成しました。大岡家時代には五ケ新田が加わり、「九町五新田」と称されました。九町は、市宿町、久保宿町、冨士宿町を中心に三つに分けられ、触達などは岩槻会所から各町内に伝えられる仕組みでした。

助郷、交通・経済、隣の宿場町

岩槻宿では六斎市が開かれ、ネギ、ゴボウ、米、木綿などが売買されました。隣の宿場町は、日光御成道沿いに大門宿と幸手宿がありました。日光社参の際には、日光門主もこの地を訪れました。

史跡・文化遺産

岩槻には、細淵家住宅長屋門、岩槻城并侍屋敷城下町迄総絵図、長谷川家住宅旧店蔵及び主屋、岩槻城址公園など、数多くの史跡や文化遺産が残されています。これらの史跡は、岩槻の歴史と文化を今に伝える貴重な遺産です。

岩槻宿は、城下町と宿場町という二つの顔を持ち、独特の文化と歴史を育んできました。その遺産は、現代においても大切に保存され、訪れる人々に歴史のロマンを伝えています。

もう一度検索