岩橋千塚古墳群

岩橋千塚古墳群について

岩橋千塚古墳群（いわせせんづかこふんぐん）は、和歌山県和歌山市岩橋に位置し、古墳時代後期後半に築かれた重要な古墳群です。この古墳群は、日本の文化遺産として国の特別史跡に指定されています。約600基から成るこの古墳群は、紀伊国造集団に関連しており、地域の歴史を知る上で欠かせない存在です。

様々な古墳が存在

岩橋千塚古墳群は、北方の鳴神地区にある花山支群、南方の岡崎地区に位置する井辺八幡古墳支群、西方の宮地区にある紀国造家が祀る日前神宮・國懸神宮など、異なる地域に支群が分布しています。この群集は、前方後円墳、円墳、方墳から構成されており、中でも円墳が最も多く見られます。前方後円墳の比率は約1%と非常に少なく、割と独特な構成です。

古墳群は6世紀後半頃に造営されたと推定されており、以降1世代または2世代先には群集墳の築造が行われなくなりました。追葬や祭祀もほとんど行われていない中で、井辺八幡古墳支群に見られる井辺1号墳は方墳としての特徴があり、族長による盟主墳的な古墳の造営がしばらく続いていたことを示しています。これらの古墳の築造は、6世紀末には終了しており、大化の薄葬令よりも約50年も前に終わっていることが分かります。

埋葬施設の技術

古墳群には、初期の築造から5世紀中頃までは粘土槨や箱式石棺が用いられ、5世紀末から6世紀前半にかけては竪穴式石室や横穴式石室が主流となります。石室には、紀伊国の周辺で採取される緑泥片岩が使用されており、その特性としては板状に剥離できる点が挙げられます。この石材は、床面から持ち上げられ積み上げられ、天井部には大きな板石で覆われます。このような構造は、紀ノ川流域の他の古墳にも見られ、地域の独自性を示しています。特に、海南龍頭里古墳には岩橋千塚古墳群の工人集団の影響を受けた痕跡が確認されています。

発掘調査の歴史

岩橋千塚古墳群は、1906年に坪井正五郎による分布調査が開始され、翌年には大野雲外が技術的な発掘調査を行います。その後も多くの研究者により調査が続けられ、1931年には一部が国の史跡に指定され、1952年には主要部分が特別史跡に指定されました。さらに1998年と2000年にも指定が追加され、現在では65ヘクタールの区域が野外博物館として整備され、一般に公開されています。

古墳の構成

古墳群内の主な古墳には、将軍塚古墳や知事塚古墳、天王塚古墳などがあります。これらの古墳は前方後円墳が多く、中には石室が公開されているものもあります。特に、天王塚古墳は和歌山県内で最大の規模を誇り、地元の人々にとっても重要な歴史的資産となっています。また、大日山35号墳からは特異な形象の埴輪が出土しており、考古学的にも興味深い存在です。

まとめ

岩橋千塚古墳群は、古墳時代の歴史や文化を知る上で貴重な場であるとともに、地域のアイデンティティを形成している重要な資産です。これからもその価値を保ちながら、多くの人々に親しまれていくことでしょう。

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