島ぐるみ闘争

島ぐるみ闘争：沖縄の土地を巡る住民の抵抗

1956年、アメリカ施政権下の沖縄で、大規模な市民運動「島ぐるみ闘争」が展開されました。この闘争は、米軍による軍用地の収用と、それに伴う土地問題が背景にあります。

背景：戦後沖縄の土地問題

第二次世界大戦後の沖縄は、アメリカ軍の占領下に置かれました。当初、米軍はハーグ陸戦法規に基づき土地を占有していましたが、1952年のサンフランシスコ講和条約発効により、法的な土地使用の根拠が必要になりました。また、軍用地の地主からは、地代支払いの要求が高まっていました。この状況に加え、米軍が新たな土地収用を始めたことで、地主や農民の反発が強まり、島ぐるみ闘争へと発展していきました。

土地を守る四原則

沖縄の立法院は、米軍による土地の「一括払い方式」での買い上げや永久使用に反対し、1954年4月30日に「土地を守る四原則」を決定しました。

1. 一括払い反対: 軍用地の買い上げや永久使用、借地料の一括支払いを拒否する。
2. 適正補償: 使用中の軍用地に対して、住民が要求する適切な金額を毎年支払う。
3. 損害賠償: 米軍による損害に対して、住民の要求する適切な賠償を行う。
4. 新規接収反対: 未使用の軍用地は速やかに返還し、新たな土地収用は行わない。

これらの原則を掲げ、立法院、行政、市町村会、土地連合会の四団体が協力し、米国民政府との交渉を開始しました。

プライス勧告と島ぐるみ闘争の激化

米下院軍事委員会の調査団が作成した「プライス勧告」では、土地料の値上げや不要な土地の返還が盛り込まれたものの、軍用地の一括払い方式が示唆されました。この勧告に対し、沖縄の世論は大きく反発しました。1956年6月20日、プライス勧告全文が発表されると、沖縄県内各地で住民大会が開催され、島ぐるみ闘争は最高潮に達しました。

住民の抵抗と米軍の対応

島ぐるみ闘争に対抗するため、米軍は中部地域に軍関係者の立ち入りを禁止する「オフ・リミッツ」を実施しました。これは、米軍人を顧客とする事業への経済封鎖となり、沖縄住民に譲歩を迫る結果となりました。しかし、住民の抵抗は収まることなく、大規模な県民大会が開催されるなど、闘争は激化の一途を辿りました。

問題の決着と闘争の影響

1958年4月、米軍は一括払い方式を中止し、土地使用料の大幅な値上げを実施しました。また、土地使用料は原則毎年払いとされました。しかし、新規接収や損害賠償問題は依然として未解決のままでした。同年12月末、立法院は関連法案を可決し、土地問題は一旦の決着を迎えました。

島ぐるみ闘争は、米軍側に一定の譲歩をさせたものの、土地の利用権が確立され、そのルールが整備されました。また、この闘争は、その後の沖縄の祖国復帰運動に大きな影響を与え、住民の権利意識を高めるきっかけとなりました。

闘争に関わった主な人物

比嘉秀平: 行政主席として四原則貫徹を支持しましたが、急逝しました。
阿波根昌鴻: 伊江島での土地接収を機に「乞食行進」を行い、闘争を先導しました。
桑江朝幸: 土地連代表として闘争を率い、後に沖縄市長となりました。
瀬長亀次郎: 那覇市長に当選するも、米国民政府によって追放されました。
屋良朝苗: 沖縄教職員会会長として闘争に参加し、後の沖縄県知事となりました。

島ぐるみ闘争が残した教訓

島ぐるみ闘争は、沖縄の人々が団結して権利を主張した歴史的な出来事です。この闘争は、土地問題だけでなく、民主主義や人権、自己決定権といった重要なテーマを浮き彫りにしました。島ぐるみ闘争の経験は、沖縄県民のアイデンティティ形成に大きく貢献し、今日の沖縄にもその影響が色濃く残っています。

参考文献

新城俊昭『教養講座 琉球・沖縄史』編集工房 東洋企画、2014年。
* 中野好夫、新崎盛暉『沖縄戦後史』岩波書店、1976年。

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