島嶼町村制

島嶼町村制とは

島嶼町村制は、明治時代に日本の島嶼部において、本土の町村制とは別に施行された制度です。この制度は、各島々の地理的条件や歴史的背景を考慮し、独自の行政システムを構築することを目的としていました。ここでは、島嶼町村制の成立から廃止までの経緯、各島嶼における状況について詳しく解説します。

島嶼町村制の経緯

町村制からの除外

明治維新後、新政府は中央集権体制を確立するため、地方制度の整備を進めました。1888年（明治21年）には市制・町村制が施行され、地方自治の基礎が築かれましたが、長崎県、鹿児島県などの指定された島嶼部では、1889年（明治22年）の勅令により市制・町村制の対象から除外されました。これは、これらの地域が県庁の直接的な管轄下に置かれ、本土とは異なる行政システムが必要とされたためです。

島嶼町村制の施行

市制・町村制が施行されなかった島嶼のうち、隠岐諸島では1904年（明治37年）に独自の制度が施行されました。他の島嶼部では、1908年（明治41年）に「沖縄県及島嶼町村制」が施行され、島嶼部における地方行政が開始されました。この制度は、島々の実情に合わせた柔軟な行政運営を可能にするものでした。

各島嶼の状況

東京都 伊豆諸島及び小笠原諸島

伊豆諸島および小笠原諸島では、地理的要因や過去の経緯から、東京府による直接的な行政運営が行われ、町村の設置が大幅に遅れました。特に小笠原諸島では、1968年（昭和43年）の日本復帰後に本格的な地方行政組織が設置されました。

1900年（明治33年）: 伊豆諸島に大島島庁、八丈島庁、小笠原諸島に小笠原島庁が設置
1908年（明治41年）: 伊豆大島、八丈島で島嶼町村制施行
1923年（大正12年）: 利島、新島、神津島、三宅島、御蔵島で島嶼町村制施行
1940年（昭和15年）: 伊豆諸島の島嶼町村制が普通町村制に移行。小笠原諸島は、アメリカ軍の直接統治を経て、1968年に日本に復帰し、小笠原村となりました。

島根県 隠岐諸島

隠岐諸島では、当初、郡役所による行政が行われていましたが、1889年（明治22年）に島庁が設置され、「島司」が行政を担いました。1904年（明治37年）に町村制に準ずる制度が施行され、1921年（大正10年）に普通町村制に移行しました。

1888年（明治21年）: 郡役所を廃止、隠岐島庁が設置
1904年（明治37年）: 町村制に準ずる町村が発足
1921年（大正10年）: 普通町村制に移行

長崎県対馬

対馬では、1908年（明治41年）に島嶼町村制が施行され、14箇村が設置されました。その後、1921年（大正10年）に普通町村制に移行しました。

1908年（明治41年）: 島嶼町村制施行
1921年（大正10年）: 普通町村制に移行

鹿児島県三島村・トカラ列島および奄美群島

奄美群島では、鹿児島県設置後も県の直接統治が行われました。1908年（明治41年）に島嶼町村制が施行され、16箇村が成立。その後、1921年（大正10年）に普通町村制に移行しました。

1879年（明治12年）: 奄美群島を大島郡に編入
1908年（明治41年）: 島嶼町村制施行
1921年（大正10年）: 普通町村制に移行

沖縄県

沖縄県では、琉球処分後も間切制が継続されていましたが、1908年（明治41年）に島嶼町村制が施行され、間切が廃止されました。その後、1921年（大正10年）に普通町村制に移行し、那覇市と首里市が誕生しました。

1896年（明治29年）: 沖縄県に5郡を設置
1908年（明治41年）: 島嶼町村制施行、間切廃止
1921年（大正10年）: 普通町村制に移行、那覇市・首里市が設立

関連勅令

島嶼町村制に関連する主な勅令は以下の通りです。

明治22年勅令第1号、町村制ヲ施行セサル島嶼指定ノ件
明治29年勅令第13号、沖縄県ノ郡編制ニ関スル件
明治40年勅令第46号、沖縄県及島嶼町村制
明治37年勅令第63号、島根県隠岐国ニ於ケル町村制度ニ関スル件
大正7年勅令第335号「長崎県対馬国島根県隠岐国ニ於ケル町村制度ニ関スル件」にて全部改正

まとめ

島嶼町村制は、日本の島嶼部における特殊な行政制度であり、各島の地理的、歴史的背景に合わせて柔軟な制度運用が行われました。この制度は、後に本土と同じ普通町村制に移行しましたが、各島嶼の歴史と文化に大きな影響を与えました。

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