嵐芳三郎 (7代目)

七代目 嵐芳三郎

1965年1月13日に東京都で生まれた七代目 嵐芳三郎は、日本の歌舞伎界において、特に前進座の中心的な存在として知られる立役の俳優です。本名を寺田 広己といい、旧芸名は嵐広也。屋号は豊島屋で、定紋はふせん橘、替紋は五つ千鳥を用いています。桐朋学園短期大学部の演劇学科で学び、舞台人としての基礎を築きました。

歌舞伎役者としての歩み

幼い頃から舞台に立ち、そのキャリアをスタートさせました。初めての舞台は1970年12月、新橋演舞場にて上演された山本周五郎原作の『雨あがる』でした。子役として注目を集め、その後も着実に経験を積み重ねていきます。そして、2010年5月には国立劇場での公演『切られお富』において、井筒与三郎の役で「七代目 嵐芳三郎」を襲名しました。これは、彼の役者人生における重要な節目となり、前進座の看板役者としての地位を確立することにつながります。

映像分野での活躍

歌舞伎役者としてのみならず、俳優としても幅広い活動を展開しています。テレビドラマでは、NHKの作品に数多く出演しており、『お登勢』や『天花』といった連続ドラマに加え、NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』では田中国重役を演じました。また、大河ドラマでは2006年の『功名が辻』で福島正則役、2013年の『八重の桜』では但木土佐役を務めるなど、存在感を示しています。さらに、時代劇『陽炎の辻〜居眠り磐音 江戸双紙〜2』や、テレビ朝日の『事件シリーズ16』にも出演。映画においても活躍の場を広げ、『駆込み女と駆出し男』や『日本のいちばん長い日』といった話題作に出演し、独特の存在感を放っています。

多彩な芸術・芸能の血筋

嵐芳三郎の家系は、日本の芸術・芸能界において非常に著名な人々が集まる家系として知られています。曾祖父にあたる松山省三は、洋画家であると同時に、銀座にカフェー・プランタンを開いた実業家・文化人でした。父は六代目嵐芳三郎、そして祖父には五代目嵐芳三郎と五代目河原崎国太郎という、共に歌舞伎界で名を馳せた女方の名優がいます。母は日本舞踊家の藤間多寿史（本名：松山梨絵）で、五代目河原崎国太郎の次女にあたります。また、兄は六代目河原崎國太郎で、彼もまた歌舞伎の女方として活躍しています。叔父には同じく歌舞伎立役の嵐圭史や、俳優の松山英太郎、松山政路、声優の麦人、叔母には女優の寺田路恵やシャンソン歌手の広瀬節子などがおり、従妹には由夏や松山愛佳、従弟には芦田昌太郎など、多岐にわたる分野で才能を発揮する親族に囲まれて育ちました。このような豊かな芸術的背景は、彼の役者としての深みや幅広さに大きく影響を与えています。

その他の活動

舞台や映像での活動に加え、文筆活動にも力を入れています。2021年には、自身の思想や経験を綴った著書『受け継ぐべきもの』を出版しました。これは、彼が受け継いだもの、そして次世代に伝えていきたいと考える伝統や価値観について語ったものであり、役者としての内面を知る上でも貴重な一冊となっています。

歌舞伎の伝統を守りつつ、現代の舞台や映像作品にも積極的に出演することで、幅広い層の観客を魅了し続けています。その確かな演技力と、多様な表現力は、日本の演劇界において重要な位置を占めています。前進座における活動はもちろん、外部の舞台や映像作品への出演を通じて、今後さらなる活躍が期待される俳優です。

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