嵐333号作戦

嵐333号作戦：ソ連によるアフガン最高指導者暗殺作戦

嵐333号作戦は、1979年12月27日にソビエト連邦（ソ連）の特殊部隊が、アフガニスタン民主共和国の首都カーブルで実行した秘密作戦です。この作戦の主な目的は、当時のアフガニスタンの最高指導者であったハフィーズッラー・アミーン人民民主党書記長を暗殺することでした。

作戦の背景

1978年4月、アフガニスタン人民民主党（PDPA）がクーデターにより政権を掌握し、アフガン民主共和国が成立しました。しかし、党内では急進派（ハルク派）と穏健派（パルチャム派）の対立が激化し、さらに改革に反対するムジャーヒディーンによる抵抗運動が拡大していました。このような不安定な情勢の中、PDPA内ではソ連への軍事介入を求める声が高まっていました。

ソ連側も、アフガニスタンがアメリカ合衆国に接近することを警戒していました。ソ連の諜報機関は、アミーン書記長が首相時代にアメリカの外交官と秘密会談を行ったことを察知し、KGB議長のユーリ・アンドロポフは、レオニード・ブレジネフ書記長に対し、アミーンの政権獲得がソ連にとって不利益であると警告していました。

1979年12月10日、ソ連国防相ドミトリー・ウスチノフは、アフガン侵攻作戦の準備を命令し、12月12日には正式に作戦が承認されました。

ソ連軍の戦力

嵐333号作戦には、KGBのアルファ部隊から24名、ゼニート部隊（後のヴィンペル部隊）から30名、空挺軍第345空挺連隊第9中隊から87名、GRU第154独立特殊任務支隊から420名が投入されました。作戦の指揮は、第154支隊長のヴァシリー・コレスニクが担当しました。

第154支隊は、ウズベク人、タジク人、トルクメン人など、アフガニスタンにも居住する民族出身の兵士で構成され、「ムスリム大隊」と呼ばれていました。この部隊は、当初、アフガン人に扮して宮殿を警護する目的で編成されましたが、後にKGBから宮殿攻略のための情報収集も命じられていました。

作戦の実行

1979年12月27日、アミーン書記長の排除を目的とした「バイカル79作戦」が開始され、カーブル市内の主要な施設がソ連軍によって制圧されました。嵐333号作戦は、その一環として、タジベク宮殿の制圧を目的としたものでした。

19時30分、ソ連軍の特殊部隊が装甲車で宮殿のゲートを突破し、侵入を開始しました。宮殿内では、改装を終えたばかりの豪華なパーティーが開かれていました。特殊部隊員は、手榴弾を使いながら部屋ごとに制圧を進め、「宮殿内で出会った者は全て殺せ」との命令が下されていました。アミーン自身も武器を取り抵抗を試みましたが、最終的には下着姿でバーに隠れていたところを殺害されました。

宮殿は、襲撃開始から約43分で制圧されました。

作戦後

アミーンの他に、11歳だった息子もこの作戦で命を落とし、遺体は宮殿近くに埋葬されました。

作戦に参加した第154支隊の兵士たちは、その功績を称えられ、多数の勲章が授与されました。作戦の責任者であったヴァシリー・コレスニクは、ソ連邦英雄の称号を得ました。

アミーンの後任には、バブラク・カールマルが選出されました。

嵐333号作戦は、ソ連によるアフガニスタン侵攻の重要な契機となり、その後のアフガン紛争へと繋がっていくことになります。

この作戦は、冷戦時代の国際政治における複雑な駆け引きと、特殊部隊による暗殺作戦の典型例として、今日まで語り継がれています。

もう一度検索