アフガニスタン人民民主党

アフガニスタン人民民主党（PDPA）

アフガニスタン人民民主党（PDPA）は、1965年から1990年代初頭まで存在したアフガニスタンの左翼政党です。パシュトー語では「د افغانستان د خلق دموکراټیک ګوند」、ダリー語では「حزب دموکراتيک خلق افغانستان」と表記され、英語では「People's Democratic Party of Afghanistan」と呼ばれます。1978年から1992年までアフガニスタンの与党として革命政権を担いました。ヌール・ムハンマド・タラキーによって創設され、党内はパルチャム派とハルク派という二つの主要な派閥に分かれていました。

歴史

野党時代

アフガニスタン人民民主党は、1964年にアフガニスタン王国で立憲君主制が導入され、議会選挙が実施されることになったことを受け、1965年1月に結成されました。カーブルの都市化と近代化に伴い台頭した学生運動や労働運動を基盤とし、反封建、民主主義、農地改革を掲げ、議会で4議席を獲得しました。党の書記長にはヌール・ムハンマド・タラキーが、国会議員にはバブラク・カールマルが就任しました。

1966年4月、人民民主党は機関紙「ハルク（人民）」を創刊しましたが、農地改革を主張したことが問題視され、わずか1ヶ月で発禁処分を受けました。党は方針を転換せず、カールマルらは農地改革の要求を取り下げて分裂し、別の機関紙「パルチャム（旗）」を創刊しました。急進的なハルク派はタラキーらに率いられ、労働者や地方教員など大衆的な層から支持を得ました。一方、穏健なパルチャム派はカールマルのもとで、学生、知識人、軍人といったエリート層に支持を広げました。

1973年、ムハンマド・ダーウード王族がクーデターを起こして共和制を樹立すると、パルチャム派はダーウード政権に協力し、ハルク派は対立しました。ハルク派のハフィーズッラー・アミーンは軍隊に工作を行い、反政府の秘密組織を組織しました。当初合法路線を採っていたパルチャム派も、ダーウード政権がアメリカ寄りの外交政策をとり、国内への弾圧を強めると、政権との協力を解消しました。1977年、両派は反政府勢力として共闘し、人民民主党の再統一を果たしました。また、両派はソ連のKGBと積極的に協力関係を築きました。

革命政権

1978年、反政府デモが激化する中、ハルク派のアミーンとつながりのある軍人らがクーデターを起こし、ダーウード政権を打倒しました。これがアフガニスタンの四月革命です。タラキーが革命評議会議長に就任し、ハルク派とパルチャム派が共同で革命政府を樹立し、アフガニスタン民主共和国が成立しました。

しかし、両派の対立はすぐに再燃し、カールマルはわずか2ヶ月後に駐チェコスロバキア大使に左遷されました。パルチャム派を政府から排除したハルク派は、農地改革を含む急進的な改革に着手しました。この改革は地方で反乱を引き起こし、ハルク派内部でも対立が激化しました。1979年9月にはタラキーとアミーンが対立し、タラキーが失脚する結果となりました。

革命政府は、反乱勢力に対抗するためにソ連への依存を深めましたが、ソ連は急激な改革が抵抗を生んでいると認識していました。1979年12月、ソ連はアフガニスタンに軍事介入（嵐333号作戦）を行い、アミーンを殺害し、カールマルを新政権の首班に据えました。ソ連は、農地改革やイスラム的価値に抵触する改革を緩め、政府への反発を抑えようとしましたが、ソ連軍の存在がアフガニスタン人の抵抗を激化させ、アフガニスタン紛争は泥沼化しました。情勢は、ムハンマド・ナジーブッラーが大統領に就任した後も好転しませんでした。ソ連軍撤退後、1992年に反乱軍が首都を制圧すると、党組織は崩壊しました。

崩壊後

ソ連軍撤退後のアフガニスタン内戦まで、人民民主党の影響は続きました。2006年のアフガニスタン下院選挙では、PDPA系の議員が約20人当選しましたが、ハルク派とパルチャム派の対立は依然として存在しています。ハルク派は10以上の政党からなるアフガニスタン国民民主連合を結成し、ドクトール・カビール・ランジバルらを当選させました。一方、パルチャム派はアフガニスタン国民民主連合に参加せず、独自の選挙戦を展開し、サイイド・ムハンマド・グラーブズイやヌルルハク・オリュミらを当選させました。

その他

ミクラヨン

共産政権時代、カーブル市内には「ミクラヨン」と呼ばれる鉄筋アパートが建設されました。これらは党幹部の住宅として使用され、中には壁にレーニンの顔が描かれた建物もありました。

祖国党

1990年6月、ソ連の支援を失ったムハンマド・ナジーブッラーは、懐柔策としてイデオロギー色を薄めた「祖国党」に党名を変更しました。しかし、ムジャーヒディーン勢力の抵抗運動に屈し、1992年にアフガニスタンで解散しました。その後、ドイツに拠点を移して活動を継続しています。

アフガニスタン国民統一党

旧祖国党の関係者によって設立された政党の一つです。2003年8月には、元ハルク派のヌルルハク・オリュミを党首として結成され、タリバン政権崩壊後の最初の選挙で議席を獲得しました。

アフガニスタン民主党

旧パルチャム派のドクトール・カビール・ランジバルによって設立された政党です。

主な党員

ヌール・ムハンマド・タラキー
ハフィーズッラー・アミーン
バブラク・カールマル
ムハンマド・ナジーブッラー
アサドゥッラー・サルワリ
アブドゥル・ラティフ・ペドラム
サイイド・ムハンマド・グラーブズイ
パチャ・ゴリ・ワファダル
ヴェスタリ・グラム・ナビ
モハマッド・ナザール
モハマッド・ヤーシン・サデキ
モハマッド・アスラム・ワタンジャル
シャフナワーズ・タナイ
ラズ・モハマッド・パクティン
モハマッド・アセフ・デラワル
スルタン・アリー・ケシュトマンド
アブドゥル・カディル
グラム・ファルク・ヤクビ
モハマッド・ファイズ
ラシッド・ドスタム

脚注

注釈

出典

参考文献

増田紘一「アフガニスタンの歴史と闘いの伝統」『前衛』第453号、68-77頁、1980年6月。doi:10.11501/2755886。ISSN 1342-5013。 NAID 40002192287。 NCID AN00131855。国立国会図書館書誌ID:2132312。全国書誌番号:00013640。

外部リンク

新生アフガニスタンへの旅
* アフガニスタン祖国党公式サイト

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