川井伸一

川井 伸一

経歴とキャリア

川井 伸一氏は、日本の経営学者であり、主に国際経営学と比較経営論の分野で研究活動を行っています。1951年5月に東京都で生まれ、学問の道を志しました。東京大学教養学部を卒業後、同大学大学院社会学研究科（現：人文社会学系研究科）の修士課程で国際学修士号を取得。その後、同博士課程で単位取得満期退学をしています。

大学院での学修を経て、1987年4月からは財団法人日本国際問題研究所にて研究員として勤務。さらに、1990年4月からは在中国日本国大使館の専門調査員として、現地での経験を積みました。これらの経験が、後の中国経営に関する研究の基盤となったと考えられます。

1992年4月、愛知大学経営学部経営学科に助教授として着任。大学教員としてのキャリアをスタートさせました。教育・研究活動が認められ、1995年4月には同経営学部教授に昇任。以来、愛知大学の発展に貢献し続けました。学部内では、経営学科長、経営学部長といった要職を歴任。さらに、大学全体の運営にも深く関わり、副学長（経営担当）を務めた後、2015年11月には第17代学長に就任しました。2023年11月までの任期中、学長として大学の発展にリーダーシップを発揮しました。

研究分野と学術貢献

川井氏の主要な専門は国際経営であり、とりわけ中国における企業の経営システムやガバナンス構造、改革のプロセスに関する研究に力を注いでいます。中国企業の「一長制」の研究や、国家・企業・従業員間の複雑な関係性、あるいは上場企業の内部者支配といったテーマについて、歴史的背景や社会主義市場経済下での変化を踏まえながら分析を進めてきました。

学術界における貢献も大きく、中国経営管理学会（現在の中国経済経営学会）では会長を務めるなど、関連分野の研究交流や発展に尽力しました。このほか、アジア経営学会、日本現代中国学会、アジア政経学会といった、アジアや中国に関わる主要な学会においても理事を歴任しており、その活動は多岐にわたります。

所属学会としては、日本経営学会、日本比較経営学会、アジア政経学会、アジア経営学会、日本現代中国学会、中国経済経営学会、国際関係論研究会などが挙げられます。

主要著作

長年の研究活動を通じて、数多くの著作を発表しています。特に中国企業に関する単著は、この分野の研究者や実務家にとって重要な文献となっています。

単著

『中国企業とソ連モデル 一長制の史的研究』 (1991年／アジア政経学会)
『中国企業改革の研究 国家・企業・従業員の関係』 (1996年／中央経済社)
『中国上場企業 内部者支配のガバナンス』 (2003年／創土社)

編著

『中国多国籍企業の海外経営 東アジアの製造業を中心に』 (2013年／日本評論社)

共著

（高木誠一郎、石井明 編）『中国の政治と国際関係』 (1984年／東京大学出版会)
（毛里和子 編）『現代中国論 1 毛沢東時代の中国』 (1990年／日本国際問題研究所)
（岡部達味、毛里和子 編）『現代中国論 2 改革・開放時代の中国』 (1991年／日本国際問題研究所)
（小林弘二 編）『中国の世界認識と開発戦略 視座の転換と開発の課題』 (1994年／アジア経済研究所)
（衛藤瀋吉先生古稀記念論文集編集委員会 編）『20世紀アジアの国際関係 1 中国の社会と国際関係』 (1995年／原書房)
（姫田光義 編）『戦後中国国民政府史の研究 1945-1949年』 (2001年／中央大学出版部)
（久保亨 編）『1949年前後の中国』 (2006年／汲古書院)
（高橋五郎 編）『海外進出する中国経済』 (2008年／日本評論社)

訳書

* （アニタ・チャン、ジョナサン・アンガー、リチャード・マドセン 著）『チェン村 中国農村の文革と近代化』 (1989年／筑摩書房)

人物像

研究や教育、そして大学運営といった多忙な日々を過ごす傍ら、趣味としては旅行やスポーツ観戦を楽しむ一面も持ち合わせています。研究者としての深い洞察力と、多角的な視点は、これらの趣味にも支えられているのかもしれません。

愛知大学での長年の貢献と、国際経営学、特に中国経営研究におけるその功績は、学術界において高く評価されています。川井伸一氏は、日本の中国研究、そして国際経営研究を牽引してきた第一人者の一人と言えるでしょう。

もう一度検索