市島謙吉

市島謙吉：多才な才能を発揮した近代日本の先駆者

市島謙吉（1860年3月9日 - 1944年4月21日）は、ジャーナリスト、衆議院議員、文化事業家、随筆家として、明治から昭和にかけて多岐にわたる分野で活躍した人物です。早稲田大学の初代図書館長としても知られています。号は春城。

生い立ちと教育

市島謙吉は、越後国蒲原郡水原村（現在の新潟県阿賀野市）で、豪農の家に生まれました。幼少期は病弱だったため、一時的に雄之助という名を与えられましたが、後に郷土の英雄・上杉謙信にあやかって謙吉と改名しました。市島家は、丹波国をルーツに持ち、越後で商業によって財を成した一族です。文化的な環境に恵まれた謙吉は、幼い頃から英才教育を受けました。漢学や英語を学び、東京大学文学部へと進学。高田早苗、坪内逍遥など、後の社会で活躍する多くの人材と交流を深めました。

ジャーナリスト、政治家としての活動

大学在学中に家業の失敗により中退を余儀なくされますが、その後、郵便汽船三菱会社での勤務を経て、大隈重信の知遇を得て政界へ関わります。立憲改進党の設立に参画し、機関誌を発行するなど、ジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせました。その後、故郷に戻り新聞社を設立し、論陣を張る中で、春城の号を贈られました。しかし、記事が原因で投獄されるという経験もしています。出獄後、東京専門学校（現早稲田大学）で政治学を教鞭をとる傍ら、新潟新聞に参加し、政治活動を続けました。衆議院議員選挙に複数回挑戦し、4回目の選挙で初当選。3期務めるも、病気により政界を引退しました。

文化事業家、図書館長としての功績

政治活動から退いた後、謙吉は、高田早苗の推薦により東京専門学校の図書館長に就任。その後、東京専門学校が早稲田大学に改組されると、初代図書館長としてその礎を築きました。和漢洋の蔵書の拡充に尽力し、図書館の発展に大きく貢献しました。また、日本文庫協会（後の日本図書館協会）を設立し、初代館長に就任。日本の司書制度の確立に尽力するなど、日本の図書館界の発展に大きく貢献しました。大日本文明協会、国書刊行会、日清印刷（現大日本印刷）など、様々な文化事業にも携わり、その多才ぶりを発揮しました。

晩年と遺産

晩年は随筆家としても活動し、多くの著作を執筆しました。1939年に脳溢血で倒れ、1944年に生涯を閉じました。没後、東京大空襲により自宅は焼失しましたが、その功績は今も語り継がれています。2010年には、生誕150年を記念して、早稲田大学と新発田市に銅像が建立されました。市島謙吉は、激動の時代を生き、ジャーナリズム、政治、文化、教育など、多岐にわたる分野でその才能を発揮しました。彼の生涯は、近代日本の発展を支えた人々の情熱と足跡を今に伝えるとともに、多才な人物が如何に社会に貢献できるかを示す、貴重な事例と言えるでしょう。

市島謙吉の家族

父：直太郎
母：シゲ
弟：豊次郎
妻：ユキ
長男：機
長女：シヅ
二男：昂
二女：ヒサ
三男：芳雄
三女：スミ
四女：ミツ

選挙経歴

1890年 - 第1回[[衆議院議員総選挙]] 新潟2区 次点（立憲改進党）
1892年 - 第2回[[衆議院議員総選挙]] 次点
1894年3月 - 第3回[[衆議院議員総選挙]] 次点
1894年10月 - 第4回[[衆議院議員総選挙]] 初当選
1898年3月 - 第5回[[衆議院議員総選挙]] 当選（進歩党）
1898年8月 - 第6回[[衆議院議員総選挙]] 当選（憲政本党）

主な著書

市島謙吉は、政治、社会、文化に関する多くの著書を執筆しました。

『政治科講義録』
『改進論』
『平民論』
『日本改進論』
『非大同団結論』
『政治原論』
『蟹の泡 奇談一五〇篇』
『大隈侯一言一行』
『芸苑一夕話 上・下』
『随筆頼山陽』
『春城随筆』
『随筆春城六種』
『春城筆語』
『春城漫筆』
『春城漫談』
『小精廬雑筆』
『春城代酔録』
『文墨余談』
『随筆早稲田』
『文人墨客を語る』
『春城閑話』
『擁炉漫筆』
『鯨肝録』
『春城随筆 余生児戯』
『回顧録』
『春城談叢』
『獄政論 並獄窓旧夢談』
『市島春城古書談叢』
『春城師友録』

これらの著書を通して、市島謙吉の思想や文化に対する深い造詣を垣間見ることができます。

参考文献

市島謙吉に関する研究は多岐にわたり、以下の文献が参考にできます。

『春城八十年の覚書』 早稲田大学図書館
早稲田大学図書館紀要 『館長日誌』
渡部輝子「市島春城没後50年によせて」 早稲田大学図書館報
早稲田大学図書館年報「市島春城生誕150年記念関連事業について」
早稲田大学大学史編纂所 『早稲田大学百年史』
『議会制度百年史 - 衆議院議員名鑑』 衆議院
日本図書館協会図書館雑誌編集委員会「日本図書館協会沿革略」
早稲田大学図書館紀要「市島謙吉 (春城) 年譜（稿）」
市島春城「翻刻『春城日誌』」 早稲田大学図書館紀要
藤原秀之「新・翻刻「春城日誌」(一)」

外部リンク

早稲田人名データベース 市島謙吉
早稲田ウィークリー ～第4回～ 春城市島謙吉と図書館
初代図書館長市島春城生誕150年記念事業 - 早稲田大学
市島 春城：作家別作品リスト - 青空文庫
市島春城 | 新潟市會津八一記念館
春城清玩 - 国文学研究資料館蔵書印データベース
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