市来貴代子

兵庫県神戸市に、1973年2月21日生まれの女子プロレスラー、市来貴代子（いちき きよこ）がいる。身長153cm、体重53kg、血液型AB型というプロフィールを持つ彼女のキャリアは、テレビ番組「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の企画として行われた女子プロレス予備校から始まった。このユニークな経緯を持つ予備校からは、後にプロレス界で確固たる地位を築く元気美佐恵、上林愛貴、シュガー佐藤といった選手たちも輩出されており、市来も彼女たちと同期にあたる。

予備校を経てLLPW（現在のLLPW-X）のプロテストに合格したものの、デビュー前に姿をくらますという波乱のスタートを迎える。しかし、プロレスラーへの情熱は消えず、1994年12月10日、IWAジャパンプロレスの長野・飯田市大会にて、シンティア・モレノを相手にようやく念願のプロデビューを果たした。IWAジャパン所属時代は、女子選手層が手薄だったため、後に様々な団体で因縁浅からぬ関係となる元川恵美（現在のさくらえみ）との対戦機会が多く、これが二人の長いライバル関係の始まりとなる。この時期のIWAジャパンには、後に世界的な活躍を見せる田尻義博（TAJIRI）も同期として所属していた。

IWAジャパンを離れた市来は、フリーランスとして活動した後に、1996年にはGAEA JAPANに新弟子扱いで入団。しかし、ここでも短期間で離れることとなる。GAEA JAPAN時代の同僚だった中野知陽呂と共に革真浪士団（現在のスーパーFMW）でリングに上がった後、大日本プロレスへ移籍。大日本プロレスでは、ハードコアな戦いも経験し、元気美佐恵とのデスマッチにも挑戦した。しかし、2000年には再び大日本プロレスを離脱し、以降はフリーランスとして、アイスリボンをはじめとする様々なインディー団体に参戦するようになる。

フリー転向後、特にアイスリボンでの活動が注目された。ここでは、さくらえみとの対戦が再びクローズアップされ、当時まだ若手だったりほ（現・里歩）とタッグを組んでさくらえみを翻弄した。また、自身の非情なファイトスタイルに対しても堂々と立ち向かってきた聖菜のことを高く評価していると伝えられている。

一時期リングから遠ざかっていたが、2011年10月28日のSMASHでの元同僚の発言を機に復帰が現実となり、同年11月27日、SMASHのリングに元IWAジャパン軍の一員としてカムバックを果たした。2012年8月18日にはシアタープロレス花鳥風月へ初参戦し、翌2013年には同団体をプロモートするG-TALENTと契約。契約後の初戦では、GAEA JAPAN時代の元同僚である旧姓・広田さくらと対戦し、勝利を収めている。

2013年7月15日、プロレスリング我闘雲舞に初参戦。板橋グリーンホール大会で行われたIWA・JAPAN指名試合として、さくらえみが保持するAWF世界女子王座に挑戦した。このタイトルマッチでは、かつてタッグを組んだ里歩がセコンドにつき、尊敬する聖菜がリングアナウンサーを務めるという、自身に関わりの深い面々が周囲を固める中で行われたが、惜しくも王座獲得はならなかった。2014年4月20日には、世界プロレス協会に初参戦し、デビュー以来20年越しのタッグ結成となる上林愛貴とのタッグが実現した。

市来貴代子のファイトスタイルを語る上で欠かせないのが、その得意技である「顔面蹴り」だ。さくらえみが「攻撃の9割がこの技」と評するほど多用し、相手の顔面を狙った容赦ない蹴りは強烈なインパクトを与える。その他にも、ジャンピングニーパッドなども使用する。キャリアの中で、BJW認定女子王座、インターナショナルエイトメンスクランブル王座、ICE×60王座といったタイトルを獲得しており、その実力も証明されている。

テレビ企画出身という特異な入口からプロレスの世界に入り、数々の団体を渡り歩きながらも、独自のスタイルと存在感を放ち続ける市来貴代子。特にさくらえみとの長きにわたる抗争や、若手への姿勢など、リング上だけでなく人間的な側面も彼女のプロレスラーとしての魅力を形作っている。小柄な体格からは想像できないような、顔面蹴りを中心とした徹底した攻めは、多くのファンに記憶されているだろう。

もう一度検索