平原王

平原王について

平原王（へいげんおう、生年不詳 - 590年）は、高句麗の第25代の王として559年から590年まで在位した重要な歴史的人物です。彼の本名は陽成（『三国遺事』王暦では陽城）で、先代の陽原王の長子として557年に太子に任命され、父王の死去に伴い王位を継承しました。平原王は、時折「平崗上好王」と呼ばれることもあり、『隋書』では「湯」と記されています。

治世の背景と外交

平原王の治世には、韓国半島における複雑な国際関係が影響を及ぼしました。百済と新羅の間に形成された同盟関係（羅済同盟）は崩壊し、新羅は独自に中国朝廷に朝貢するようになりました。この動きにより、三国間の対立は激化しましたが、それが逆に大規模な戦争を回避する要因ともなりました。

また、三国がそれぞれ独立した外交を展開することで、高句麗の従来の優位性が低下し、中国の動向に対する警戒が必要となりました。平原王は北朝の北斉や北周、さらには南朝の陳へと朝貢を行い、560年には北斉から「使持節・領護東夷校尉・遼東郡開国公・高句麗王」の封号を受けました。さらに562年には陳から「寧東将軍」、577年には北周から「開府儀同三司・大将軍・遼東郡開国公・高句麗王」として冊封されるなど、彼の外交的な活動は多岐にわたります。

隋が成立すると、581年内に平原王は更に朝貢を行い、「大将軍・遼東郡公」の称号を得ました。しかし、589年に隋が陳を滅ぼして中国を統一すると、平原王は直ちに防衛体制を整えました。この動きを見た隋は高句麗に対して不満を示し、平原王はこれに対抗して上表し、謝罪を試みようとしましたが、使者を送る前に590年10月に32年の在位を全うし死去しました。

死去とその後

平原王は厚い敬意をもって「平原王」と呼ばれ、彼の埋葬場所については詳細が伝わっていません。一部の文献では、彼が死去したことと同年に隋からの詔書を受けたことが関連して記述されていますが、これには誤りがあるとの指摘もされています。実際には、平原王が受け取った詔書についての記録が重要視され、彼の死が590年であることが強調されています。

文化的影響

平原王の影響力は、歴史書や文献に留まらず、後の文化にも広がりました。例えば、彼に関するドラマ作品として「月が浮かぶ川」が2021年に放送され、俳優キム・ボムレが平原王を演じました。

参考文献

• - 金富軾撰 著、井上秀雄 編『三国史記』 第2巻、平凡社〈東洋文庫425〉、1983年。
• - 一然 著、坪井九馬三・日下寛 訳『三国遺事』国立国会図書館〈文科大学史誌叢書〉、1904年。

関連項目

• - 王高徳 - 平原王の大丞相

平原王の治世は、三国間の外交戦略や朝貢制度が変遷する中で、平和的な運営を目指した時代であったといえます。彼の政治手腕は、後の歴史にも影響を及ぼしました。

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