平時信

平時信：穏やかな公家と激動の時代

平時信（たいら の ときのぶ）は、平安時代末期を彩った公家です。桓武平氏高棟王流に属し、兵部大輔・平知信を父に持ちました。最終的には正一位・左大臣の位階に贈位されていますが、これは死後、外孫である高倉天皇の即位によるものです。

時信のキャリアは、白河院政期後半の文章生から始まりました。その後、大学助や六位蔵人を経て、鳥羽院政期には院判官代を務めます。文官としてのキャリアと並行して、検非違使や兵部権大輔といった武官の職にも就き、甲斐権守や伊予介を兼任するなど、多様な役割を担っていました。康治元年（1142年）には、鳥羽法皇の東大寺における受戒の奉行を藤原顕頼と共に務めるなど、重要な儀式にも携わっています。康治2年（1143年）には正五位下に叙せられています。

時信の生涯は、娘たちとの関わりにおいても大きな転換点を迎えます。久安3年（1147年）、娘の時子が平清盛の継室となり、後の平宗盛を生むという重要な出来事が起こります。しかし、同年、時信の屋敷が火災によって焼失するという不幸も経験しています。この屋敷は五条京極辺りにあり、院や皇后の近臣が居住する地域であったとされています。翌久安4年（1148年）には、前年に発生した祇園闘乱（清盛の行動が発端とされる）の報謝のため、祇園社で法華八講を行う準備に派遣されています。時信は久安5年（1149年）7月26日に亡くなりました。

時信の死後、娘の滋子は後白河法皇の寵妃となり、応保元年（1161年）に憲仁親王（後の高倉天皇）を出産します。仁安3年（1168年）、憲仁親王の即位に伴い、時信は天皇の外祖父として左大臣に贈位され、さらに正一位の位階も贈られました。この贈位は、時信が天皇家と深く結びついていたことを示す重要な出来事です。

時信の人物像は、「天性柔順」という言葉で端的に表されています。争いを好まず穏やかな性格であったと伝えられ、その死は多くの人々から惜しまれたと言われています。

時信の官歴を時系列にまとめると以下のようになります。

元永元年（1118年）10月26日：文章生
天治元年（1124年）5月29日：大学助
大治5年（1128年）11月19日：六位蔵人
長承2年（1133年）2月9日：甲斐権守
康治2年（1143年）：正五位下
久安2年（1146年）4月29日：兵部権大輔兼伊予介
久安5年（1149年）7月26日：卒去
仁安3年（1168年）：贈正一位、左大臣

時信は、複数の女性との間に多くの子供をもうけています。その中には、平清盛の継室となった時子、後白河法皇の寵妃となり高倉天皇を生んだ滋子などがいます。これらの娘たちを通じて、時信は平安時代末期の政治や社会に大きな影響を与えました。穏やかな性格とは裏腹に、激動の時代を生き抜き、その娘たちは歴史の大きな流れの中に身を置いていたのです。時信の生涯は、平安時代末期の権力闘争や社会情勢を理解する上で貴重な資料となっています。様々な文献や記録を紐解くことで、その複雑で興味深い人生の一端を垣間見ることができます。

もう一度検索