平沼 (横浜市)

横浜市西区 平沼

横浜市西区にある平沼エリアは、その地理的な特徴として、おおよそ帷子川とその支流である石崎川によって区切られた地域に位置しています。この地名は、江戸時代にこの地域の開発を主導した豪商、平沼家の名に由来しています。現在の行政区分では、平沼一丁目および平沼二丁目から成り、主に商業施設と住宅が混在するエリアとして発展しています。相模鉄道の平沼橋駅や西横浜駅が利用可能で、横浜駅からもほど近い場所にあります。

歴史的背景

古来、この一帯は「袖ヶ浦」と呼ばれる深い入江が、現在の保土ケ谷区東端付近まで複雑に入り組んでいました。景勝地として知られていた袖ヶ浦ですが、帷子川からの土砂が堆積しやすく、遠浅の海となっていきました。これを受け、18世紀初頭には湾の奥部から徐々に埋め立てと新たな水田の開発が開始されます。

特に19世紀の天保年間には、程ヶ谷宿で栄えた豪商である平沼家（5代目の平沼九兵衛が1839年に開始）と岡野家が大規模な埋め立て事業を展開しました。これにより、平沼家によって平沼新田が、その北側には岡野新田（現在の西区岡野）が造成され、現在の平沼橋駅周辺までが陸地へと姿を変えました。さらに幕末の横浜開港に伴い、旧海岸線沿い（現在の新横浜通り西側付近）には「横浜道」が整備され、東海道と横浜港を結ぶ主要な交通路となりました。

明治時代に入ると、高島嘉右衛門の手により、袖ヶ浦の入り口にあたる現在の横浜駅周辺が高島エリアとして鉄道敷設のために埋め立てられます。残された水域は次第に沼地となり、通称「平沼」と呼ばれました。この沼地のうち、平沼新田に接する部分（現在の平沼一丁目東部）は、やはり平沼家によってまもなく埋め立てが進められました。また、平沼新田の土地には東海道本線が敷設され、一時期は「平沼駅」も設置されていました。残りの沼地（現在の北幸、南幸、鶴屋町にあたる地域）も大正時代までには完全に埋め立てが完了しました。昭和時代には、この地域は次第に住宅地や商業地としての性格を強めていきました。

行政区画の変遷

かつての新田村として、平沼新田は武蔵国久良岐郡に、岡野新田は橘樹郡に属していました。明治時代に入ると、1873年には横浜道沿いの町屋形成地が平沼町として独立。その後、郡区町村編制法により再び新田村に戻りますが、1878年には平沼町が横浜区に編入されます。1889年の市制町村制施行時には、平沼新田は戸太村（久良岐郡）、岡野新田は保土ヶ谷村（橘樹郡）に、平沼町は横浜市へとそれぞれ編入されました。1901年には戸太町と保土ケ谷町の一部が横浜市に編入され、西平沼町と岡野町が設置されます。1927年に横浜市が区制を施行した際、平沼町、西平沼町、岡野町は神奈川区に属しました。その後、近隣の中区との境界変更などを経て、1943年には一時的に中区に編入されますが、翌1944年には西区が分区されたことで現在の西区の一部となりました。1960年代には住居表示が実施され、1965年に西平沼町の一部が岡野に、平沼町の一部が南幸に編入された後、1966年には平沼町の一部をもって現在の平沼一丁目、平沼二丁目が新設され、旧平沼町は廃止されました。

主な施設

地域内には、水天宮平沼神社や久成寺（平沼家が勧進）といった歴史ある寺社が存在します。また、横浜市立平沼小学校などの教育機関や、tvkハウジングプラザ横浜などの商業・展示施設も見られます。

その他

郵便番号は220-0023で、神奈川郵便局が集配を担当しています。関連の深い地名や施設としては、平沼橋、平沼橋駅、西横浜駅のほか、かつて存在した国鉄および京浜電気鉄道の平沼駅が挙げられます。なお、神奈川県立横浜平沼高等学校は、名称に「平沼」を冠していますが、実際には隣接する岡野地区に位置しています。

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