平泉寺白山神社

平泉寺白山神社：越前白山信仰の中心地と、栄華を極めた宗教都市の歴史

福井県勝山市に位置する平泉寺白山神社は、白山信仰において越前国側の重要な拠点として、717年、泰澄によって開山されたと伝えられています。平安時代以降は比叡山延暦寺の末寺となり、霊応山平泉寺として名を馳せ、豊原寺と並ぶほど繁栄しました。明治時代の神仏分離令によって、現在の神社へと姿を変えています。

創建から中世：延暦寺との関わりと、僧兵集団の台頭

創建以来、平泉寺は比叡山延暦寺との深い関わりを持ちました。応徳元年（1084年）には延暦寺の末寺となり、その後一時園城寺の末寺となる時期もありましたが、再び延暦寺の末寺として認められています。承安2年（1172年）には大講堂が再建され、延暦寺の学僧が落慶法要の導師を務めたという記録が残っています。大講堂には多くの仏像が安置され、その規模と荘厳さを伺い知ることができます。

源平合戦期には、平泉寺は有力な僧兵集団を擁し、歴史の大きな流れに影響を与えました。『平家物語』には、平泉寺の僧兵が木曾義仲を裏切ったことが記されています。義仲との関係は複雑で、裏切りと寄進という対照的な出来事が記録されています。この事実は、平泉寺が既に強力な軍事力を有していたことを示しています。

鎌倉時代には、源義経が奥州へ落ち延びる際に立ち寄ったという伝説も残っており、義経や武蔵坊弁慶に関する伝承が語り継がれています。南北朝時代には、後醍醐天皇方についた後、北朝方に転じ、合戦に巻き込まれるなど、激動の時代を生き抜きました。新田義貞が戦死した燈明寺畷の戦いは、この時代の平泉寺の関与を示す出来事です。

室町時代：全山を焼き尽くした大火と、宗教都市としての発展

室町時代に入ると、越前守護・斯波氏の庇護を受けて平泉寺は勢力を拡大しました。しかし、永享12年（1440年）の大火によって全山が焼失するという大きな打撃を受けました。それでも、幕府からの復興資金の援助を受け、再建を果たします。この再建以降、石垣を多用した堅固な城郭都市へと変貌を遂げ、東西1.2キロメートル、南北1キロメートルにも及ぶ広大な敷地には、多数の坊舎や堂塔が立ち並び、8000人を超える僧兵を抱える巨大な宗教都市を形成しました。南谷と北谷という異なる性格の地区があり、街並みがあった痕跡も地名として残っています。

戦国時代：朝倉氏との関係と、内紛と衰亡

戦国時代には、越前を治める朝倉氏と並ぶほどの勢力を誇り、「日本国一番の法師大名」と称されるほどでした。寺領8000石を誇り、飛鳥井宝光院や大聖院といった有力な坊舎が寺内を統括していました。朝倉氏とは深いつながりがあり、朝倉氏の戦に僧兵が参加した記録もあります。

しかし、織田信長による朝倉氏滅亡後、平泉寺内部で権力闘争が激化します。玉泉坊によるクーデター、そして一向一揆との抗争を経て、天正2年（1574年）に平泉寺は全山を焼き尽くされ、滅亡の危機に瀕しました。その後、顕海らによって再興が図られ、豊臣秀吉の崇敬も受けながら復興を果たしました。

近世から現代：神仏分離令と、現在

江戸時代には、福井藩や越前勝山藩からの援助を受け、規模を縮小しながらも存続しました。加賀馬場・白山比咩神社との長年の利権争いは、江戸幕府の裁定によって終止符を打ちました。明治時代の神仏分離令により、寺号を捨て、神社として現在に至っています。境内には、国の名勝に指定された庭園や、国の史跡に指定された旧境内、美しい苔むす参道など、歴史と自然が融合した景観が広がっています。現在も、参拝や観光、パワースポットとして多くの人が訪れています。交通アクセスは、勝山駅から路線バスを利用するのが便利です。

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