平資盛

平資盛：歌人として、武将として、そして愛人として生きた生涯

平資盛は、平安時代末期を駆け抜けた平家一門の武将であり、数々のドラマチックな出来事に身を投じた人物です。平清盛の嫡男である平重盛の次男として生まれ、母は藤原氏出身と伝えられています。優れた歌の才能を持ち、『新勅撰和歌集』『風雅和歌集』に作品が収められているなど、歌人としての名声も確かなものです。

資盛の誕生年は諸説ありますが、1158年から1161年の間と推測されています。若くして従五位下に叙爵され、越前守に任命されるなど、順調な出世街道を歩み始めます。しかし、彼の華麗な経歴は、権力闘争や悲劇的な運命と複雑に絡み合っていくことになります。

摂政との衝突と政治的停滞

嘉応2年（1170年）、資盛は摂政・松殿基房の牛車との行き違いの際に、下馬の礼を欠いたことをきっかけに、基房の家来と乱闘騒ぎを起こしてしまいます。この事件は、資盛の政治的立場に悪影響を及ぼし、その後、出世は停滞。弟の清経にすら抜かれることになります。さらに、同年に発生した「殿下乗合事件」では、基房の牛車が襲撃されるという事件が発生。この事件に平重盛、ひいては平清盛が関わっていたとする説や、そうでないとする説があり、歴史家の間でも議論が続いています。

後白河法皇の近臣として

その後、資盛は箏の演奏の腕前を買われ、後白河法皇の近臣として重用されるようになります。法皇の御宴でしばしば演奏を披露し、その才能で高い評価を得ていました。治承2年（1178年）には近衛右少将に昇進。父・重盛の死後もその地位を保ち続け、美濃源氏の挙兵の際には平知盛と共に反乱鎮圧に当たっています。祖父・清盛の死後も、後白河法皇からの信頼は変わらず、右近衛権中将、正四位下にまで昇進します。この頃、藤原基家の娘と結婚しています。

平家滅亡への道：都落ちと最期の戦い

寿永2年（1183年）、源氏の反乱軍が都を目指して進撃してきます。資盛は京防衛のために宇治田原へと派遣されますが、平氏一門の西国下向に伴い、京に戻ります。その後、後白河法皇に庇護を求めますが、受け入れられることなく、平氏本隊に合流します。平家一門が都落ちした後も、資盛は独自の行動を取っていたことが伺えます。

その後、平氏は九州、四国へと転戦を繰り返しますが、資盛は豊後国の住人に拘束されたという噂も残されています。一ノ谷の戦い、藤戸の戦いなど、幾多の戦いを経験し、壇ノ浦の戦いでは、弟の平有盛、従兄弟の平行盛と共に海に身を投じて自害。享年25歳でした。

建礼門院右京大夫との恋

『建礼門院右京大夫集』には、資盛と建礼門院右京大夫の深い愛情が綴られています。治承元年（1177年）頃から始まったとされる二人の恋は、平家滅亡の直前まで続きました。最期の別れ際、資盛は右京大夫に歌を贈り、その悲恋は後世にまで語り継がれることになります。

伝説と子孫

資盛は、奄美群島に落ち延びたという伝説があり、その地には資盛を祭神とする神社が存在します。また、鎌倉時代の得宗被官であった平盛綱など、多くの有力者が資盛の子孫を自称しているなど、彼の血筋は様々な形で現代にまで受け継がれている可能性があります。

平資盛の生涯は、歌人としての才能、武将としての活躍、そして建礼門院右京大夫との悲恋など、様々な側面を併せ持つドラマチックなものでした。歴史の表舞台で活躍した一方で、権力闘争や運命に翻弄され、悲劇的な最期を迎えた彼の生涯は、人々の心に深く刻まれたままです。彼が残した歌や、伝えられる伝説は、平安時代末期の激動の時代を今に伝える貴重な資料となっています。

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