康運

康運（こううん）は、生没年不詳の平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した慶派の仏師です。父は著名な仏師である運慶で、その次男にあたるとされています。一説には嘉禎2年（1236年）10月に亡くなったとも伝えられていますが、定かな記録は残っていません。

建久9年（1198年）頃、康運は父である運慶に従い、兄の湛慶ら兄弟と共に東寺の仁王像と二天像の造立に携わりました。この頃から、父の工房の一員として着実に経験を積んでいたと考えられます。承元2年（1208年）には、興福寺北円堂の諸尊像造顕において、法橋の位にありました。この際、四天王のうち増長天像を担当し、その才能を発揮しました。また、貞応2年（1223年）4月には、高山寺に移された地蔵十輪院の諸尊像のうち、広目天像を造立しました。これらの作品を通して、康運は慶派の様式を受け継ぎながらも、独自の表現を追求していたことが伺えます。

特に注目されるのは、『高山寺縁起』における記述です。この縁起には、康運が定慶と改名したという記述があり、現在では肥後別当定慶と同一人物であるという見方が有力となっています。もしこの説が正しければ、康運は晩年に定慶と名乗り、肥後（現在の熊本県）を拠点に活動していた可能性があります。

康運の家族構成については、父が運慶であることは確実で、兄弟には湛慶、康弁、康勝、運賀、運助がいます。また、子には康円、康定がおり、彼らもまた仏師として活動したと考えられています。

現存する作品としては、笹間延妙寺の木造阿弥陀如来立像が知られています。この像は、康運の作風を研究する上で貴重な資料となっています。

関連人物としては、肥後別当定慶が挙げられます。かつては康慶の弟子と言われていましたが、近年では康運が改名したという説が有力になりつつあります。康運の研究は、鎌倉時代の仏教美術、特に慶派の彫刻を理解する上で重要な意味を持っています。

参考文献：
三宅久雄『日本の美術459 鎌倉時代の彫刻 仏と人のあいだ』至文堂、2004年。ISBN 4-7843-3459-9。

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