廃虚の唇

廃虚の唇

『廃虚の唇』（はいきょのくちびる）は、推理小説やハードボイルド作品で知られる黒岩重吾が著した長編小説です。この小説は後に映像化され、1964年には同名のテレビドラマが、また1963年には『黒の駐車場』というタイトルで映画が製作されました。

原作小説について

本作は『週刊読売』に連載され、単行本は光文社から刊行されました。物語は、弱小製薬会社の若き社長である泉田敬を主人公に据えています。泉田は、自身の会社を下請けとして引き立ててくれた有力取引先、丸木製薬の営業部長・松崎が謎の不審死を遂げたことから、事件の真相を追究することになります。

特務機関CIC（対敵諜報部隊）の影がちらつく中で、泉田は戦後の混乱期から高度経済成長期へと移り変わる激動の時代を生き抜いていきます。その過程で、彼は常識的な道徳観念に囚われず、時には背徳的な手段をも辞さず、巧みな立ち回りによって窮地を脱していきます。物語は、単なる殺人事件の追跡に留まらず、事件の背後に潜む現代社会の深い闇、権力者である政治家や悪徳弁護士たちの腐敗、そして登場人物たちの間に絡み合う複雑で醜い人間関係を生々しく描き出しています。

テレビドラマ版

原作小説を元にしたテレビドラマは、1964年4月2日から同年9月24日にかけて、当時のNET（日本教育テレビ、現在のテレビ朝日）系列で放送されました。全26話構成で、放映形式はモノクロ16mmフィルムでした。

放送時間は当初、毎週木曜日の21時45分から22時45分でしたが（1964年4月30日まで）、同年5月7日からは毎週木曜日の22時00分から23時00分に変更されています。

スタッフ

原作：黒岩重吾（光文社 刊）
企画：片岡政義
脚本：今村文人、石郷岡豪
監督：伊賀山正光、鈴木敏郎、今村農夫也
助監督：田中秀夫、坂本太郎、他
音楽：西山登
撮影：土屋俊忠
照明：吉岡伝吉
録音：上出栄二郎
編集：伊吹勝雄
美術：有隅徳重
記録：小橋菜菜 他
進行：奈良場繁
協力：中田プロ
制作：NET、東映テレビプロ

キャスト

泉田敬：天知茂
大谷典子：上月左知子
松崎節子：緑魔子
服部：高城丈二
高橋久子：野川由美子
吉原夏子：宮城千賀子
松崎幾子：加藤治子
草川秋子：沢たまき
松崎営業部長：神田隆
律子：星美智子
井頭：石井伊吉
丸木製薬新社長・角沼：高橋正夫
西塚五郎：宮口二朗
天草四郎
神塚：中原美紗緒
島村：伊豆肇
幸田宗丸
神郡：江見俊太郎
犬塚雷太郎：深見泰三

ゲスト出演

第1話：桐山明子、古賀京子、香月京子
第3話：瀬川路三郎（高田権衛門）、村田正雄（三田署刑事）、谷本小夜子、陶隆
第6話：植田貞光
第7話：大原譲二（今村）
第8話：西川敬三郎
第13話：丘野美子
第14話：丘野美子
第16話：稲吉靖
第20話：室田日出男、梅津栄
第21話：倉田地三
第22話：瀬川路三郎、大野英誠
第23話：岩城力也、室田日出男、中林容子
第24話：菅沼正
第25話：植村謙二郎（井上）

主題歌・挿入歌

オープニングテーマ：『廃虚の唇』
歌：天知茂
作詞：水木かおる
作曲：藤原秀行
編曲：廣瀬雅一
レーベル：ポリドール・レコード
挿入歌：『星のない夜のブルース』
歌：天知茂
作詞：水木かおる
作曲：藤原秀行
編曲：廣瀬雅一
レーベル：ポリドール・レコード

主演を務めた天知茂は、本作で主題歌と挿入歌も担当し、歌手としても活動しました。

映画版

テレビドラマ版に先行して、1963年には本作を原作とした映画も製作されています。映画版はテレビドラマとは異なり、『黒の駐車場』というタイトルで公開されました。

• ---

以上が、黒岩重吾の小説『廃虚の唇』およびその映像化作品に関する概要です。

もう一度検索