廣恵寺

廣恵寺（こうえじ）

廣恵寺は、かつて岐阜県中津川市福岡植苗木の城ケ根山に存在した臨済宗妙心寺派の寺院です。山号を智源山と称しました。この寺院は、後に苗木遠山氏へと繋がる福岡遠山氏の菩提寺であったと伝えられています。現在、寺院の跡地には宝篋印塔が数基残されており、当時の面影をわずかに伝えています。

歴史

廣恵寺の開基には、興味深い伝承が残されています。多治見市の虎渓山永保寺を開山した夢窓疎石が諸国行脚の折、この地を訪れた際、その風景が唐の廣恵寺に似た霊場であると感じたと言われています。夢窓疎石の弟子である枯木紹栄（枯木要影）が観音像を受けて開山したと伝えられています（『苗木伝記』）。

また、別の記録（『御坂越記』）によれば、感応元年（1350年）10月17日に遠山景信が開基し、夢窓疎石の弟子である枯木紹栄が開山し入寺したとされています。これらの伝承から、廣恵寺は14世紀中頃には既に存在していたことが伺えます。

永禄12年（1569年）6月、苗木城主の遠山直廉は、廣恵寺からの求めに応じ、寺の保護を目的とした禁制を下しました。その内容は以下の通りです。

山林竹木の伐採や牛馬の放し飼いを禁止すること。
寺方に背く悪僧や職務を怠る者への成敗を許可し、もし手に負えない場合は城側に申し出ること。
寺の門前での諸役を一切免除すること。

この禁制は、当時の廣恵寺が地域において重要な役割を果たしていたことを示唆しています。しかし、天正2年（1574年）に武田勝頼による遠山領侵攻の際、神社仏閣がことごとく焼き討ちされたため、廣恵寺もその際に滅亡した可能性が高いと考えられています。

しかし、江戸時代まで存続していたという説も存在します。この説によれば、後継となる住職がいなくなり、自然に廃寺となったとされ、観音堂のみが残っていたと伝えられています。明治3年（1870年）の廃仏毀釈により観音堂も廃絶を余儀なくされましたが、明治16年（1883年）に地元の有志によって再建されました。その後、老朽化が進み、昭和60年（1985年）4月7日に取り壊されましたが、同年中に再び再建され、現在に至っています。

遺構

現在、廣恵寺跡の城ケ根山麓には、再建された観音堂のほか、石積み、礎石、古井戸、庭池、土塁や堀の跡などが残っています。また、宝篋印塔と五輪塔も当時の姿を伝えています。かつてこの地には、福岡遠山氏の居城である広恵寺城が存在し、城主館や武家屋敷などもあったとされており、植苗木は中世の恵那郡北部の中心地として栄えていました。

遠山氏関連寺院

廣恵寺の他にも、遠山氏に関連する寺院が周辺地域に存在します。

雲林寺（中津川市）
大圓寺（恵那市）
龍護寺（恵那市）
萬勝寺（恵那市）
安住寺（恵那市）
雲祥寺（恵那市）

参考文献

『福岡町史　通史編　上巻』福岡町　1986年
『中津川市史　上巻』中津川市　1968年
『恵那郡史』恵那郡教育会　大正15年
* 花園大学国際禅学研究所　論叢　第6号

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