遠山直廉

遠山直廉：激動の戦国時代を駆け抜けた武将

遠山直廉（とおやま なおかど）は、戦国時代の美濃国（現在の岐阜県）で活躍した武将です。彼は、美濃東部の有力国衆である遠山景前の三男として生まれました。

明照遠山氏の初代当主として

直廉は、当初、兄の遠山武景が苗木遠山氏の養子となったため、手賀野村（現在の中津川市手賀野）に阿寺城を築き、明照遠山氏の初代当主となりました。

苗木遠山氏を継承

しかし、兄の武景が不慮の死を遂げたため、直廉は苗木遠山氏を継ぐことになります。彼は高森山砦を拡張して苗木城を築き、城主として恵那郡北部と加茂郡東部を治めました。

戦国大名との関係

斎藤氏との関係

遠山氏は、当初、美濃を支配していた斎藤道三に従属していました。しかし、斎藤氏が下剋上によって没落すると、遠山氏は新たな勢力との関係を模索することになります。

武田氏との関係

信濃国を領国化していた甲斐の武田氏が、遠山氏の領地と接する伊那郡を制圧すると、遠山七頭は武田氏の傘下に入りました。直廉も、武田氏との関係を深め、武田晴信（信玄）の後押しで長兄が岩村遠山氏の当主となるなど、一族の勢力拡大を図りました。

織田氏との関係

一方、遠山氏は、美濃に勢力を伸ばす織田氏とも関係を築きました。桶狭間の戦いでは、直廉は「苗木勘太郎」と名乗り、織田方として参戦しています。この「苗木勘太郎」は、織田信長の妹を妻に娶り、信長との関係をより強固なものとしました。

両属状態と外交

当時の遠山氏は、武田氏と織田氏の両方に属する両属状態にありました。直廉は、大圓寺、安国寺、政秀寺の外交僧を通じて、武田氏と織田氏の外交を仲介しました。また、信長の養女となった娘を、信玄の庶子である武田勝頼に嫁がせることで、武田氏と織田氏の連衡を成立させました。

晩年と死

永禄11年（1568年）には、信玄に従って駿河侵攻に参加しています。また、飛騨の三木氏との関係も深く、一時は三木氏の領地である下呂温泉に湯治に出かけるほどでした。しかし、永禄12年（1569年）、信玄から三木氏の離反者を攻めるように命じられ、飛騨国益田郡に侵攻しますが、大威徳寺の戦いで矢傷を負い、苗木城に戻った後、その傷がもとで亡くなりました。

その後の苗木遠山氏

直廉には男子がいなかったため、苗木遠山氏は一時的に断絶しました。その後、信長は飯羽間遠山氏の遠山友勝を苗木城主として迎え、苗木遠山氏を存続させました。

諸説

大威徳寺の戦い

大威徳寺の戦いについては、永禄2年（1556年）、同13年（1570年）、元亀3年（1572年）とする説もあり、その時期には諸説あります。

直廉の別名

直廉は、武田信玄の書状に「遠山左衛門尉」や「遠山左近助」として登場する人物であるという説もあります。また、『高森根元記』にある遠山正廉と同一人物とする説も存在します。

苗木勘太郎と同一人物説

前述の通り、直廉を苗木勘太郎と同一人物とする説もあります。苗木勘太郎は、軍記物によると、桶狭間の戦いに参戦し、信長の妹を妻に娶り、その娘を武田勝頼に嫁がせたとされます。また、上村合戦にも織田方として参戦したとされます。ただし、苗木勘太郎は苗木城主の通称であり、指し示す人物は特定されていません。

まとめ

遠山直廉は、戦国時代という激動の時代の中で、様々な勢力との関係を巧みに築き、一族の存続と勢力拡大に尽力した武将です。その生涯は、戦国時代の地方豪族の複雑な立場と、その中で生き抜くための知恵と勇気を物語っています。

参考文献

加藤護一 編「国立国会図書館デジタルコレクション 第六篇　戦国時代（近古後期の二）」『恵那郡史』恵那郡教育会、1926年、142-143,頁。
平山優『信玄危うし！武田包囲網の脅威』（Kindle）学研〈歴史群像デジタルアーカイブス＜武田信玄と戦国時代＞〉、2015年。
平山優『西上の野望を粉砕！　織田信長の対武田戦略』（Kindle）学研〈歴史群像デジタルアーカイブス＜織田信長と戦国時代＞〉、2015年。

関連項目

遠山氏

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