廣瀬大社

廣瀬大社：悠久の歴史と伝統を誇る奈良の神社

廣瀬大社は、奈良県北葛城郡河合町川合に鎮座する神社です。古くから崇敬を集め、式内社（名神大社）に列し、かつては官幣大社、現在は神社本庁別表神社として、その格式の高さを示しています。かつては「廣瀬神社」と呼ばれていました。

祭神と由緒

主祭神は若宇加能売命（わかうかのめのみこと）です。別名、大忌神とも呼ばれ、伊勢神宮外宮の豊宇気比売大神や伏見稲荷大社の宇加之御魂神と同神とする説、龍田大社の龍田風神との関連も伝承されています。

相殿神として櫛玉命（くしたまのみこと）と穂雷命（ほのいかづちのみこと）が祀られています。櫛玉命は饒速日命を指すとされ、社家の樋口氏は饒速日命を祖神とする物部氏の末裔と伝えられています。境内には饒速日命を祀る境外末社もあります。

鎮座地は、高田川、曽我川、大和川、飛鳥川など奈良盆地の主要河川の合流地点にあたり、この地理的条件から水神信仰が盛んに行われてきました。

社伝によれば、崇神天皇9年、広瀬の河合の里長・廣瀬臣藤時に託宣があり、沼地が一夜にして陸地に変わり、多くの橘が生えたことから、その地に社殿が建立され、大御膳神として祀られたと伝えられています。龍田の風神と広瀬の水神は、古くから対として信仰されてきました。『日本書紀』にも、風神を龍田立野に、大忌神を広瀬河曲に祀ったとの記述があり、これが4月と7月に行われる廣瀬大忌祭の起源と考えられています。

『延喜式神名帳』には大和国広瀬郡に「広瀬坐和加宇加乃売命神社」として名神大社に列せられ、朝廷の月次祭・新嘗祭に幣帛が奉納されたことが記録されています。

その後、神階は次第に上昇し、弘仁13年（822年）には従五位下、仁寿2年（852年）には従三位にまで昇叙され、天安3年（859年）には正三位に昇格しました。永保元年（1081年）には最高位の正一位にまで達し、後に二十二社の1社にも数えられるようになりました。

室町時代には広大な神領を有していましたが、永正3年（1506年）の赤沢朝経による焼き討ちで、多くの宝物や古文書が焼失し、神領も荒廃しました。天正年間には豊臣秀長によって神領が没収されるなど、幾多の困難を経験してきました。

明治4年（1871年）には官幣大社に列格し、第二次世界大戦後には「廣瀬大社」と称するようになりました。昭和23年（1948年）には神社本庁別表神社に列せられています。

境内と祭事

境内には、奈良県指定有形文化財である本殿（正徳元年（1711年）再建）、幣殿、明治時代に再建された拝殿、社務所、神馬舎などが建ち並びます。また、日露戦争の戦利品であるロシア陸軍の野砲とその砲弾が奉納・展示されています。

摂末社として水足明神、祓戸社、祖霊社、稲荷社、日吉社、境外社として饒速日命社、八神殿社、水分神社などが存在します。

主な祭事として、2月11日に行われる例祭・砂かけ祭（御田植祭）が有名です。これは御田水口祭礼に由来し、砂を雨に見立てた祈雨の神事であり、拝殿前の広場を田に見立て、参詣者や田人、牛に扮した人たちが砂をかけ合う独特の祭です。

文化財

本殿は奈良県指定有形文化財に指定されており、廣瀬神社の砂かけ祭は河合町指定無形民俗文化財に指定されています。

アクセス

JR関西本線法隆寺駅から徒歩約30分、近鉄田原本線池部駅から徒歩約35分です。

廣瀬大社は、歴史と伝統に彩られた神社であり、訪れる人々に深い感動を与えてくれるでしょう。

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