引分 (相撲)

引分（ひきわけ）についての解説

相撲において、「引分」とは両方の力士が疲労やその他の要因により、勝負を決められない場合に与えられる裁定のことです。この用語は、特に戦いが物理的に膠着状態にある時によく見られます。相撲の伝統的なスタイルでは、力士同士ががっぷりと組み合い、勝敗を明らかにしようとします。しかし、時には両者が動けなくなり、その結果、引分の決定が必要となります。これに対して星取表には「×」の印が付けられ、試合の成果を記録します。

江戸時代から明治時代にかけての相撲界では、力士がただ勝負をつけるのではなく、力士同士が保持するメンツや抱える大名の意向が影響して、引分を狙う傾向も見られました。その一例として、明治40年の夏場所で横綱の大砲万右エ門は、なんと9日間連続で引分を記録したという珍しい出来事があります。また、常陸山と梅ヶ谷の対戦も、横綱に昇進してからは引分が多く見られました。

1909年に両国国技館が開かれ、東西の団体優勝制度と個人への優勝額授与制度が開始されると、力士たちは勝負を決めることに重点を置くようになりました。この変化によって、スピード感のある相撲を取る力士も登場し、引分の数は次第に減少していきました。大正末期には制度改革が行われ、2番後取り直し制度が決められ、引分はさらに少なくなりました。

1943年の5月場所において、青葉山徳雄と龍王山光の取組が引分になったことがありますが、当時の軍部の影響下にあった日本相撲協会は、両力士に「敢闘精神不足」なる理由で出場停止処分を与えるという事態になりました。このような事情からも、引分がどのように扱われるかは、時代や状況によって様々であることを示しています。

その後、現在の制度においては、二番後取り直しの後に水入りが行われ、その後も動きがない場合に引分とされることが定められています。ただし、1967年以降は幕内での引分は発生しておらず、幕下以下では1986年が最後の事例とされ、現在では引分は非常に稀な結果となっています。

引分における優勝争いの複雑さ

引分が優勝争いにどのように影響するかに関する規定は、時に曖昧であり、これが論争の的となることもしばしばです。一般的に白星は黒星よりも価値が高いとされていますが、引分が優勝判定にどのように計算されるかは明確ではありません。1909年の規定では、勝ち星の数だけで優勝が決まるのではなく、勝ち星と負け星の差に基づいて順位が決められています。

具体例として、1958年11月場所で初代若乃花は引分を3回記録し、最終的に優勝争いで苦しみました。このような複雑な状況は、同じ成績の力士同士が対決した場合の処理をさらに難しくしています。現在においては、これらの問題が以前のように起こることはなくなりましたが、今後もその取り扱いについては目が離せません。

引分には、力士たちの名誉や立場に影響を与える重要な側面があります。これからの相撲界でも、この制度がどのように変わっていくのか、注目が必要です。

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