張勲復辟

張勲復辟：清朝復活の試みとその終焉

1917年7月1日から7月12日までのわずか12日間、中国では清朝の旧臣である張勲（ちょうくん）が、清朝の廃帝であった愛新覚羅溥儀（あいしんかくらふぎ）を擁立し、清朝を復活させようとする事件、張勲復辟（ちょうくんふくへき）が発生しました。

事件の背景

当時の中華民国では、対ドイツ参戦を巡って、大総統の黎元洪（れいげんこう）と国務総理の段祺瑞（だんきずい）との間で深刻な対立が生じていました。日本は段祺瑞を支持し、イギリスやアメリカは黎元洪を支持するという国際的な駆け引きも絡み合っていました。黎元洪が段祺瑞を罷免しようとしたのに対し、段祺瑞は配下の各省督軍に独立を宣言させるなど、政情は不安定でした。そんな中、黎元洪は安徽督軍の張勲に調停を依頼し、張勲は軍を率いて北京に入ります。

復辟の実行

1917年6月30日、紫禁城内で陳宝琛（ちんほうしん）らが「御前会議」を開き、清朝復活の陰謀を企てます。その日の深夜には、駅や郵便局に放火し、混乱の中で黎元洪に「大政奉還」を迫ります。7月1日、張勲は陸軍総長の王士珍（おうしちん）、歩軍統領の江朝宗（こうちょうそう）らと共に、正式に溥儀を擁立し、黎元洪を一等公としました。さらに、張勲自身が議政大臣となり、直隷総督と北洋大臣を兼任しました。年号は民国6年から宣統9年に改められ、五色旗は龍旗に変更されるなど、清朝の官制が復活しました。

復辟の失敗

この清朝復活の動きに対して、世論は強く反発しました。黎元洪は日本の大使館に逃げ込み、各省に討伐を呼びかけます。梁啓超（りょうけいちょう）は天津で張勲討伐を誓い、段祺瑞は「討逆軍」を組織しました。7月7日、討逆軍は廊坊で張勲軍を破り、7月12日には北京に入城。溥儀は張勲の辞職と自身の退位を宣言し、張勲はオランダ大使館を経て天津の租界へ逃亡、康有為（こうゆうい）はアメリカ大使館へ逃げ込みました。こうして、わずか12日間の清朝復活の試みは失敗に終わりました。

復辟の背景と影響

張勲復辟の背後には、イデオローグとして康有為が関わっていたほか、第一次世界大戦において中華民国の対ドイツ参戦を望まないドイツ帝国の思惑もあったとされています。張勲が黎元洪に迫って国会を解散させたことで、孫文（そんぶん）は広州で国会議員に南下を呼びかけ、中華革命党員に討伐を命じました。これが後の護法運動へと繋がっていきました。

主要関連人物

張勲: 清朝の旧臣で、復辟の中心人物。
愛新覚羅溥儀: 清朝の廃帝で、復辟によって一時的に皇帝に擁立された。
黎元洪: 中華民国の大総統で、張勲によって一時的に失脚させられた。
段祺瑞: 中華民国の国務総理で、討逆軍を組織して復辟を鎮圧した。
康有為: 復辟のイデオローグとして関与した。
梁啓超: 張勲討伐を呼びかけ、討逆軍を支援した。

まとめ

張勲復辟は、当時の中国の政治的混乱と列強の思惑が複雑に絡み合った事件でした。この短期間の騒動は、その後の中国の歴史に大きな影響を与え、護法運動へと繋がっていくことになります。

参考文献

川島真 (2010). 『近代国家への模索1894‐1925　―シリーズ中国近現代史〈2〉』. 岩波新書. ISBN 9784004312505 

関連項目

康有為

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