廃帝

廃帝（はいてい）とは

廃帝とは、東アジア世界の王朝において、主に内部抗争などの理由で帝位を廃された皇帝や天皇を指す言葉です。

通常、廃位された皇帝や天皇には、その功績をたたえる諡号（しごう）や廟号（びょうごう）が贈られません。そのため、公式な記録では「廃帝」という呼称が用いられます。

廃帝の処遇

廃帝となった人物は、多くの場合、諸侯王や諸侯といった地位に落とされます。その際は、新たな地位名で呼ばれることが一般的です。また、即位自体が認められず、元の位に戻されるケースもあります。

しかし、廃帝に対しても一定の敬意が払われることも少なくありません。「少帝」「末帝」「後主」「末主」「廃主」といった称号が用いられることがあります。

墓所についても、皇帝や天皇の陵（りょう）とは異なり、「墓」と呼ばれるのが通例です。

複数の廃帝が存在する場合

一つの王朝で複数の廃帝が出た場合、「前廃帝」「中廃帝」「後廃帝」といったように、在位した順番を示す呼称が用いられます。また、諱（いみな：生前の本名）を付けて「廃帝某」と呼んで区別することもあります。

各王朝の廃帝の例

中国

中国の各王朝における廃帝の例を以下に示します。

前漢：廃帝昌邑王（劉賀）
三国時代
魏：廃帝斉王（曹芳）、廃帝高貴郷公（曹髦）
呉：廃帝会稽王（孫亮）
後趙：廃帝海陽王（石弘）、廃帝斉公（石世）、廃帝彭城王（石遵）、廃帝義陽王（石鑑）
成漢：廃帝邛都県公（李期）
前秦：廃帝厲王（苻生）
東晋：廃帝海西公（司馬奕）
十六国時代：夏の廃帝（赫連昌）
北魏：廃帝南安王（拓跋余）、廃帝東海王（元曄）、前廃帝広陵王（元恭）、後廃帝安定王（元朗）
南朝
宋：前廃帝（劉子業）、後廃帝蒼梧王（劉昱）
斉：廃帝鬱林王（蕭昭業）、廃帝海陵王（蕭昭文）、廃帝東昏侯（蕭宝巻）
梁：廃帝臨賀王（蕭正徳）、廃帝豫章王（蕭棟）
陳：廃帝臨海王（陳伯宗）
西魏：廃帝（元欽）
北斉：廃帝済南王（高殷）
隋：廃帝秦王（楊浩）
唐：廃帝襄王（李熅）、廃帝徳王（李裕）
五代後梁：廃帝郢王（朱友珪）
北漢：廃帝（劉継恩）
金：廃帝海陵王（完顔迪古乃）、廃帝衛王（完顔果繩）
モンゴル帝国：アリクブケ
清：保慶帝（溥儁）、宣統帝（溥儀、国民党政権における呼称は清廃帝）

ベトナム

ベトナムの各王朝における廃帝の例を以下に示します。

丁朝大瞿越：廃帝（丁璿）
陳朝大越：廃帝昏徳公（楊日礼）、廃帝霊徳王（陳晛）
後黎朝大越：中廃帝（黎光治）、後廃帝昏徳公（黎維祊）
阮朝大南：廃帝朗国公（協和帝、阮福昇）、廃帝懐仁郡王（咸宜帝、阮福明）、廃帝懐沢公（成泰帝、阮福昭）、維新廃帝（阮福晃）

日本

日本の天皇には、現在では全ての天皇に諡号や追号が贈られています。そのため、現在「廃帝」と呼ばれる天皇は存在しません。

ただし、淳仁天皇と仲恭天皇は、明治3年（1870年）に追号されるまでは「廃帝」と呼ばれていました。

淡路廃帝（淳仁天皇）
九条廃帝（仲恭天皇）

関連項目

同諡号廟号一覧
廃王
廃公
廃太子

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