張特

張特の生涯と戦績

張特（ちょう とく）は、中国の三国時代に属する魏の武将であり、字は子産であった。生没年は不詳であるが、彼は幽州の涿郡出身であり、歴史的な舞台において重要な役割を果たした。彼の事績からは、軍人としての才覚と戦略的思考が際立っている。

初期の官歴と評価

張特は初め、牙門将軍としての任務を担っていた。しかし、彼の上司である諸葛誕からは無能と見なされ、都に戻されるところまで追い込まれた。それにもかかわらず、彼の運命は嘉平4年（252年）に大きく変わった。この年、諸葛誕が呉との戦いで敗北を喫し、毌丘倹と交代することになる。その際、張特は毌丘倹によって呼び戻され、合肥新城の守備任務を与えられたのだ。

合肥新城の守備

嘉平5年（253年）、状況は厳しく、呉の諸葛恪が合肥新城を包囲し、張特は陥落寸前まで追い込まれた。しかし、彼はこの絶体絶命の状況において、冷静さを保ち、粘り強い交渉を試みる。張特は呉軍に対し、「私はもう戦うつもりはない」と告げ、魏の法に従って城が攻撃されてから百日間救援がなければ降伏しても家族が連座しないことを指摘した。彼は守備している兵士たちの気持ちを考慮し、降伏を望まぬ者が半数以上いることを訴える。さらに、城内の者の善悪を分けて名簿を作成すると約束し、その信証として自身の印綬を呉軍に預けることを提案する。

張特の策略と反撃

呉軍は彼の言葉に乗せられ、攻撃を一時中断することにした。しかし、この一時的な休戦は張特にとって有利に働く結果となった。彼はその機会を利用して城壁の補強を行い、翌日には再び呉軍に対して「私にはただ戦闘による死があるだけだ！」と叫んだ。呉軍は怒り、攻撃を再開するが、張特の巧みな防衛戦術により城は陥落することなく守り抜かれる。最終的には、呉軍は撤退を余儀なくされた。

勲功と昇進

この功績により、張特は雑号将軍に昇進し、列侯に封じられ、その後は安豊太守に移ることとなった。彼の物語は、その戦術と勇気だけでなく、困難な状況においても冷静さを持ち続ける技能を示している。

三国志演義への登場

張特は羅貫中の小説『三国志演義』の第108回でも登場しており、正史『三国志』の記述にも沿った形で、彼の合肥新城防衛が描かれている。こうした文献により、彼の卓越した武将としての姿が後世に伝えられていることは、彼の歴史的意義を物語っている。

まとめ

張特の生涯は、逆境に立ち向かう力強さと、戦略的な知恵を兼ね備えた武将の一例と言える。その知恵と勇気は、三国時代の武士としての模範となり、多くの歴史書や物語に名を刻んでいる。

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